研究概要 |
従来の災害調査における無人航空機の役割は, 空撮により情報を集めることであり, 被災者への救援物資の運搬は、十分考慮されていなかった. しかし, 2011年に発生した東日本大震災では, 多くの道路が寸断され, 車両の到達が困難な場所や建物上層階に被災者が取り残される状況が発生した. この経験から, 情報収集を行うだけでなく, 物資運搬が可能な無人航空機が必要となっている. しかし, どのような物資がどれだけ必要かは事前には分からず, さらに物資は重心や空力形状を考慮していないため搬送が難しいという問題がある. ケースに入れて運搬する場合でも, ケース内の質量分布は未知であり, また様々な形状のケースに対応する必要がある. この問題に対して, 無人航空機が搬送物の形状や重量を認識し, 臨機応変に搬送を行う制御アルゴリズムを構築することで解決を目指した. 本研究では、無人航空機自身が未知の搬送物の空力特性を推定し、推定結果を用いて、効率よく物資を搬送する手法を構築するところに独創性と新規性がある. 平成25年度は、まず搬送物の空力特性を利用した搬送制御アルゴリズムの構築および、実験による検証を行った. 搬送物の空力特性が既知のとき、搬送物の空力特性を利用し、効率良く飛行することが可能か実験により検証した. 搬送物の形状による影響を確認するため、実験では翼型の搬送物を用いて実験を行った. 検証の結果、無人航空機は搬送物の空力特性を利用した場合、利用しない場合と比較して、2~3倍程度長距離を飛行可能になることが実験により明らかになった. また無人航空機による搬送物の空力特性推定において、推定値の妥当性を検証するための真値を得るため、無人航空機及び搬送物のスケールモデルを作成し、風洞試験を実施した. 風洞試験の結果、搬送物及び無人航空機の空力特性を計測した. この結果を開発したシミュレータに実装し、より実機に近い飛行を再現することに成功した.
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