研究課題/領域番号 |
13J04229
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
田中 崇大 大阪大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 強磁性体 / メゾスコピック |
研究実績の概要 |
一般に強磁性体は、静磁エネルギー、磁気異方性エネルギー、交換エネルギーによって決まる自由エネルギーが最小になるように磁気構造をとる。サブマイクロスケールの強磁性体の円盤では、交換エネルギーと静磁エネルギーの競合の結果、磁気構造は渦状になることが知られている。この渦の中心では、垂直磁化成分を持つ微小領域(磁気コア)が現れる。この磁気コアの向きを磁気渦の極性と呼び、磁場によって反転させることができる。本研究はこの極性の反転を電気的に検出することを目的として行った。
本研究では、磁気渦の極性を検出する方法として2次元電子系に作製された量子ドットの磁気抵抗に注目した。量子ドットの真上に磁気渦があると考える。この時、量子ドットの内部にある電子は磁気コアからの漏れ磁場の影響を受ける。その結果、量子ドットの抵抗が磁気渦の極性によって変化する可能性がある。この抵抗変化を電気的に検出することで、磁気渦の極性が検出できると期待される。今回、磁気コアの反転による量子ドットの抵抗変化を古典的ビリヤードシミュレーションにより計算を行った。計算する際に、コアの漏れ磁場は階段関数で近似し、ドットは四角形では1×1μm2とした。外部磁場を0.05から0.4 Tまで変化させながら透過率の変化をコア上向き、下向きそれぞれについて計算した。その結果、コアの反転により抵抗が0.3 %程度変化することがわかった。この結果は、量子ドットを用いた磁気渦の極性の電気的検出は原理的に可能であることを示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、量子ドットの伝導が磁気渦からの漏れ磁場に敏感に影響をうけるであろう、という予測を、数値シミュレーションによって実証することに成功した。この結果は、量子ドットを用いた磁気渦の極性を電気的に検出することが原理的に可能であることを示している。現在、この理論を実験的に検証するための試料作製に取り組んでいる。これらのことからおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に行った理論研究を実験的に検証する。具体的には、希釈冷凍機中で磁気渦の極性による量子ドットの抵抗の変化を観測する。さらに、量子ドットを用いて磁気渦の極性を検出することで、磁気渦の反転過程を詳細に調べる予定である。極低温では、このスピンの反転がトンネル効果によって起こる可能性がある。局在スピンの反転が熱活性からトンネル効果に変化する様子を調べる予定ある。
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