研究課題/領域番号 |
13J04235
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
棟方 涼介 京都大学, 生存圏研究所, 特別研究員(DC1)
|
キーワード | プレニル基転移酵素 / クマリン類 / フラノクマリン類 / グレープフルーツ / レモン / パセリ |
研究概要 |
従来の研究計画であるクマリン基質O-プレニル基転移酵素遺伝子に関する研究の他、当初の研究計画には記載されていないが、原著論文に取りまとめた研究内容及び現在論文リバイズ中の研究内容があるため、それらも合わせて報告する。 1. クマリン基質O-プレニル化酵素(O-PT)遺伝子の単離 当初の計画では実験材料はレモンであったが、高い抗腫瘍活性を有するO-プレニル化クマリン誘導体を高蓄積する、クマリン成分の研究例が豊富であるといった理由から、同じ柑橘類のグレープフルーツを実験材料として用いた。NCBIのESTデータベースを基に、グレープフルーツ外果皮由来total RNA逆転写産物から5つの候補遺伝子(GfPT1~5)を得た。 植物細胞をホストとするタバコ葉発現系を立ち上げ、これらの酵素機能解析を行った。しかしながら、いずれについてもO-PT活性は得られなかった。 申請者のこれまでの研究から、PTの触媒機能調節因子の存在が示唆されていた。そこで、触媒機能調節因子のソースとしてグレープフルーツ外果皮由来タンパク画分を調製し、これを酵素反応系に添加した。しかし本解析においてもO-PT活性は得られず、本活性に関しては調節因子の存在は認められなかった。 2, レモン由来PTの単離・機能解析 修士課程からの継続研究であり、当該年度では詳細な酵素機能の解析を行った。これまでの結果を論文に取りまとめて投稿し、現在はリバイズの段階である。 3. フラノクマリン生合成を担うUOT遺伝子の同定 クマリン類にはフラノクマリン類(FC)と呼ばれるサブグループが存在する。FCは多様な生理活性を示し、現在医療にも応用されている。このFCの生合成経路においてC-PTの一種であるUDTがその初発反応を触媒するという重要な位置を占める。当該年度の研究により従来未知であったUPT遺伝子のセリ科パセリからの単離に成功し、原著論文に取りまとめた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本来の目標であるO-PT遺伝子の同定は未だ達成できていないが、修士課程から行っていたレモンのクマリン基質C-PT遺伝子の同定と機能解析に関して、研究内容を論文にまとめて投稿した。また、日仏の共同研究事業に参画する機会を得て、フラノクマリンの生合成に重要なクマリン特異的C-PTであるUDT遺伝子をパセリから取得し、論文にまとめることができた。また、ネガティブな結果ながら、柑橘のクマリン基質O-PT活性に関してはネイティブなタンパク質が触媒機能を改変する活性を持たないごとを示した。
|
今後の研究の推進方策 |
グレープフルーツ外果皮をサンプルとして次世代シークエンサーによるRNA-seq解析を行い、O-PT遺伝子を網羅的に探索する。また、O-プレニル化クマリン誘導体はセリ科植物においても見いだされるため、柑橘類と並行してセリ科植物も研究対象としてO-PT遺伝子の探索を進める。現在すでにセリ科草本のアシタバ、パースニップから計3つの候補遺伝子全長配列を得ており、これらの酵素機能の解析を進める予定である。
|