研究課題
本年度は、C-mannosylationされる新たな候補タンパク質としてhyaluronidase1 (HYAL1)に着目し、C-mannosylationされているか否かの解析、及びその機能に与える影響を解析した。HYAL1は細胞外マトリクスのヒアルロン酸を分解することで細胞の運動性を向上させることから、HYAL1の過剰発現は癌の悪性化に関与している。HYAL1にはTrp130及びTrp321の2カ所のC-mannosylation予測部位がある。そこでHYAL1の過剰発現細胞を樹立し、その培養上清及び細胞抽出液よりHYAL1を精製した。それらを質量分析により解析した結果、培養上清より精製したHYAL1はC-mannosylationされていなかったが、細胞抽出液より精製したHYAL1はTrp130においてC-mannosylationされていることを明らかにした。以上の結果から、HYAL1はC-mannosylationされることで分泌が抑制されていることが示唆された。次に、HYAL1がヒアルロン酸分解酵素であることから、その活性に与える影響を評価した。質量分析の結果から、細胞内のHYAL1はC-mannosylationされているものとされていないものの2種類が存在することが示されたが、この2種類のHYAL1を分離することは困難であった。そこで、コンピュータシミュレーションによりC-mannosylationがHYAL1の酵素活性に与える影響を評価した。現在報告されているHYAL1のX線結晶構造に対し、シミュレーションソフト上でHYAL1のTrp130にマンノースを付加し、基質であるヒアルロン酸をドッキングさせ、構造の最適化を行った。その結果、HYAL1がC-mannosylationされることにより、HYAL1の活性中心であるGlu131は基質であるヒアルロン酸より遠位に存在することが示された。以上の結果から、HYAL1の酵素活性はC-mannosylationにより負に制御されていることが示唆された。HYAL1は癌悪性化因子であることから、C-mannosylationによる機能制御という今回の新たな発見は、新たな分子標的薬の開発につながると考えられる。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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