本研究ではシグナル伝達核酸である8-nitro-cGMPを、水中で効率的に捕捉する分子プローブを開発することを目的としている。プローブ分子は、核酸塩基認識・捕捉反応部位とリン酸結合部位を複合した構造を設計した。まずは塩基認識・捕捉反応部位を検討してきたが、平成25年度の成果として、グアニン塩基部分の認識構造にHoogsteen面でリンカーを介してチオール反応基を有するnitroG-Graspが、8-nitroGのニトロ基を求核置換する性質をもつことを報告した。リンカーの炭素数3のC3-nitroG-Graspが最も高い反応性を示し、速度論的解析によって、反応性がチオールのpKaとリンカーの自由度に支配されていることを見出した。この結果を基に平成26年度前期ではリンカー部分にベンゼン環を導入したnitroG-Grasp誘導体を設計・合成した。8-nitroGとの反応を調べたところ、含水溶媒中・pH7の条件下でも効率よく反応が進行し、C3-nitroG-Graspと比べ非常に高い反応性を示した。 リン酸結合部位について検討していく中で、認識部位としてcyclenの亜鉛錯体を複合した8-oxoGTP-Receptorが水中で8-oxoGTPに対して特異的認識することを前年度に報告した。平成26年度は塩基認識部位から金属錯体部位までの連結構造を変えたさらに2つの誘導体を合成し、8-oxodGTPに対して特異的な蛍光消光が得られることを確認した。 また8-nitro-cGMP捕捉分子の開発にも着手し、モデル分子として8-thioG-Graspを設計・合成した。ウレア型又はカルバメート型リンカー末端に脱離基Clを導入した誘導体で8-thioGに対する反応を比較したところ、アルカリ性条件下でウレア型の方が高い反応性を示した。
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