研究課題/領域番号 |
13J04287
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
清水 翔太郎 東北大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 近世武家社会 / 近世武家相続 / 幼少相続 / 近世大名家の婚姻 / ジェンダー構造 / 儀礼 |
研究実績の概要 |
当該年度は、近世大名家の儀礼・相続・奥向・交際など政治権力を世襲する上での諸問題について、明治前期を視野に後期の事例を分析する予定であった。しかしこうした研究は中・後期の事例を分析したものは多くあるものの、前期を事例とした研究とリンクさせて考察した研究はなされておらず、通時的に分析されていないことで、問題の所在が曖昧になっている部分もあった。こうした先行研究の問題を解決する必要性を強く感じたため、当該年度は後期の史料も採集しつつ、近世前期の大名家の動向についても分析することとした。特に、世襲の家を存続させる上で避けられなかった幼少相続をめぐる諸問題について、また大名家の交際関係の核となる婚姻をめぐる諸問題について、17世紀から19世紀初頭まで通時的に分析し、新たな論点を提示することを課題として研究を進め、学会にて口頭発表した。その成果は以下の通りである。 まず、幼少相続については、幼君を支えた「看抱」の慣行に注目して、幼少相続時の幕藩関係や親類大名と家老、後家の役割について、これまで先行研究ではあまり議論されてこなかった点を明らかにしたが、特に前期の事例をもとに「看抱」の認識がなされていたため、19世紀初頭の幼少相続に際して、家老たちが先例にとらわれて、柔軟な対応ができていないことを論じたことは意義があるものと考える。 次に、近世大名家の婚姻に関しては、近世中・後期を事例に分析されてきた縁組成立過程の実態について、大名とその世嗣の縁組成立過程・縁組と婚礼時の年齢に注目し、近世前期から通時的に分析することでその時期的変遷について詳らかにすることができた。特に、18世紀半ば以降、幕府への届け出等の手続きが簡略化・形骸化し、幕府が大名の婚姻に干渉することが少なくなくなるなかで、大名同士の動きが活発になるなど、幕藩関係の変容過程を明らかにしたことは意義があるものと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初は明治初頭までの事例を分析し、まとめる予定で史料を収集したものの、19世紀初頭までの事例分析にとどまってしまい、近世の事例を通時的に分析することができなかったため。 また、近世前期の事例を分析したことで、中・後期の政治慣行について理解を深め、口頭発表をして新たな論点を提示することができたが、論文にもとめることはできなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
当該年度口頭発表した成果を論文にまとめるとともに、明治初期の佐竹家の家政を記した『御日記』などの史料収集を進め、それらを分析する。特に以下の3点の課題を推進する予定である。 第一に、当該年度分析できなかった幕末の動向について分析を進め、それにより近世大名家における政治権力世襲をめぐる諸問題について通時的にまとめるつもりである。 第二に、第一の課題をまとめつつ、明治初期の史料を分析し、近世大名の華族化に関する諸問題についても考察する。 第三に、当該年度分析した近世大名家の婚姻については、男性の事例を中心としたものであり、大名の娘など女性の視点からも分析する。
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