研究概要 |
行列模型は物性論から原子核理論, 素粒子論, さらには物理学に留まらず生物学や経済学, 情報科学などに至るまでの広範な応用可能性を持ち, その普遍的な性質の解明は重要な意義を持つ. 本研究の目的は行列模型における新たな普遍的性質の探求とその応用であり, 従来の分類法では明らかでなかったクラスの行列模型の解明を目指す. 本年度は特に「外場」と呼ばれる項を含むタイプの行列模型の研究を行った. この外場の効果は行列固有値に対して様々な影響を及ぼすのであるが, 本研究では外場と特性多項式が同時に存在する状況を考察し, それらが双対な関係になっていることを明らかにした. 行列模型のスペクトル曲線の言葉を用いると, 外場と特性多項式はいずれもリーマン面に極の構造をもたらすのだが, それぞれ座標系が異なっている. この座標系はフーリエ変換によって入れ替えることが可能であり, 実際に行列模型において外場と特性多項式が互いにフーリエ変換, あるいはラプラス変換によって結びついていることを明らかにした. また外場や特性多項式を伴う行列模型は可積分階層のタウ関数として振る舞うことが一般に知られているが, 外場と特性多項式の双方を同時に含む場合にもタウ関数になっていることを明らかにした. 特に特徴的なのはこの行列模型が1次元戸田格子と2次元戸田格子に対して同時にタウ関数になっていることである. さらにこの外場と特性多項式を伴う行列模型を位相的弦理論の文脈で考察し, リーマン面における位相的ブレーンの交差を実現していることを指摘した.
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