研究課題/領域番号 |
13J04302
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
木村 太郎 独立行政法人理化学研究所, 仁科加速器研究センター, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ランダム行列理論 / 超対称ゲージ理論 / 結び目理論 / 共形場理論 / 超伝導 / 超弦理論 / 位相幾何学 |
研究実績の概要 |
本年度は昨年度に引き続いて「外場」を伴う行列模型の研究を重点的に行った.特に昨年度に得られた Hermite 行列模型における外場・特性多項式双対性の一般公式をさらに拡張し,Hermite 超行列模型においても同様の双対性が一般的に成立することを示した.また超行列模型の応用として,超弦理論・M理論において重要な役割を果たす ABJM 理論の研究も行った.この ABJM 理論に対して局所化の方法を用いると,その分配関数は超行列 (超群) 化した Chern-Simons 模型として記述されることが知られている.我々はこの理論における重要な物理量である Wilson ループ演算子を導入することが,行列模型に対して外場を導入することに対応することに着目し,その類似性を手掛かりに Wilson ループ演算子の行列式構造を明らかにした.さらに Chern-Simons 理論における Wilson ループと結び目不変量の関係性を発展させ,トーラス結び目不変量に対応する新しい ABJM 理論をシンプレクティック変換を通して構成した.トーラス結び目不変量は Rosso-Jones 公式と呼ばれる関係式によって自明な結び目不変量に分解することが出来るが,超行列化した理論である ABJM 理論においても同様の関係式が成り立つことを示した.具体的には,一つのループだけでなく,複数のループが絡み合う状況を考え,それによって位相的場の理論として満たすべき性質の多くを ABJM 理論が兼ね備えていることを示した.さらに,近年 Chern-Simons 理論に対して提案されている精密化 (refinement) の方法を ABJM 理論に対しても適用し,そこから導き出される数学的な関係式についての予想を提案した.その他本年度は,共形場理論の方法を用いた1次元系における不純物問題や,カイラル超伝導における角運動量の問題などについても取り組み,成果を挙げている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度に引き続いて行列模型の双対性を主として研究対象とし,いくつかの成果を挙げることができた.この双対性は興味深い幾何学的な解釈が可能であり,その観点から行列模型を超えた応用が可能であることが明らかになってきている.従って行列模型に基づいた普遍性探求という本研究目的に対して着実な進展であると言える.
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究で得られた行列模型の性質を元に,様々な場の量子論における非摂動論的性質の解明を目指す.例えば行列模型の古典極限に現れるスペクトル幾何に相当する幾何学によって超対称ゲージ理論の有効理論が記述可能であることが知られているが,その量子化を議論する上で特性多項式期待値が重要な役割を果たす.そのため,特性多項式の双対性を場の理論的に解釈することで非自明な関係式が得られることが期待される.他にも場の量子論の素粒子論・物性論などへの応用に関する研究を推進していく.
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