研究概要 |
本研究の対象は、タイ北部で400人程度の一民族によって話されるムラブリ語である。本研究の目的は、(1)これまで研究蓄積が少なかったムラブリ語の1次資料の収集と整理、(2)ムラブリ語文法の記述、この2点を挙げていた。 (1)これまで、研究蓄積の少なかったムラブリ語にあって、その研究にまず求められるのは、1次資料の収集である。本研究は、言語ドキュメンテーションを行うことで、ムラブリ語研究のこの要請に応えようとしている。平成25年度は5月に1ヵ月, 9月から11月にかけて2ヶ月, 12月から2月にかけて3ヶ月, タイのナーン県フアイユアク村に滞在し, 言語ドキュメンテーションを実施した. その結果, 1次資料として映像資料約10時間, 音声資料約15時間を記録した. また, そこで得られた資料の一部はELANなどのアノテーションソフトを用いて, 言語学的な情報を付した. (2)言語ドキュメンテーションによって得られた1次資料を用いて、ムラブリ語の文法を記述することが, 本研究の2番目の目的である。理論的な立場として、基礎言語学理論(Basic linguistics theory)を採用し、類型論的な知見を利用して言語学的分析を行った。1次資料も十分に集まり, 分析も順調に進め, ムラブリ語の簡易文法を論文として執筆した. また, 人称代名詞, 数詞, 親族名称について集中した調査を行い, それぞれ論文と研究発表に結実した.
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究計画に加え, 県きゅ対象であるムラブリが「文化的再適応」といつ生業を変化させたことが分かっている民族集団であることを考慮し, 認知科学, 心理言語学, 狩猟採集民研究における貢献を意識した研究を志す必要性を認識した. よって, 今後の調査ではそれらの分野の中での位置づけを考えつつ調査を行う。
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