研究課題
近年の実験技術の飛躍的進歩によって、安定線から遠く離れた不安定核の実験が可能となった。これを受け、陽子数(Z)が10~12, 中性子数(N)が20~22程度の「逆転の島」と呼ばれる領域が改めて注目を集めている。本研究では、全反応断面積の理論的解析を通して、「逆転の島」領域をまたぐ原子核であるMg同位体(Z=12)の核構造を解明することを目的とした。解析には反対称化分子動力学法(AMD)によって構築される核密度と二重畳み込み模型で計算される光学ポテンシャルを用いる。この手法は核構造に仮定を置かない微視的な理論である。この理論をMg同位体の全反応断面積の計算に適用し、それが実験データをよく再現することを確認した。この理論を以て、Mg同位体の基底状態の構造(スピン・パリティ、変形度、核半径、束縛エネルギー)を推定した。その後、これまでに解析されたNeの結果を合わせることで「逆転の島」領域を俯瞰した。MgとNeのどちらに対してもN=19から変形度が急増しており、ここを「逆転の島」の入口と断定した。さらにMg同位体においては、巨大な変形が40Mg(N=28)まで続いていることを結論付けた。今後、より重い領域の原子核にも本理論を適用すべきだが、ここで用いたAMDは核子数が50程度までの原子核に計算が限られため、別の理論との接続を行う必要がある。今後、本研究では微視的平均場理論のHartree-Fock-Bogoliubov(HFB)を採用する。HFBをMg同位体の計算に適用したところ、AMD計算から得られた基底状態の結果をよく再現し、さらに、励起状態のエネルギーE(2+), E(4+)や遷移確率B(E2)の実験データともよく整合した。まだ準備段階ではあるが、重い領域の原子核の全反応断面積の解析をするための準備が整いつつある。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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