研究概要 |
本研究の目的は, 心臓性突然死の予防に向けて, 自律神経が生み出す心拍動の短期・長期ゆらぎの生理学的特性とその関係性を解明した上で, クラウド型生体情報取得技術を用いた在宅医療支援システムを構築することである. 今年度は, これらの研究目的について研究実施計画を立案し, A. 相関カスケード法を用いた長期ゆらぎの生理学的特性の解明, B. 長期リアルタイム自律神経活動推定法の開発を行った. それぞれの具体的な内容, 意義および重要性を以下に示す. Aについては, 生理学実験により取得した被験者7名の0時~18時の心電図の時系列データに対して, 心拍動特性の関係性の変化を捉えることが可能な相関カスケード法を用いて評価を行った結果, 心臓性突然死が多くみられる朝の時間帯に心拍動の時系列データの相関が変化することを示した. これは, 心臓性突然死のリスク指標の提案という意義に対して, 時間帯による心拍動の特性変化を抽出し, 長期ゆらぎの生理学的特性を解明できたという点で, 重要性が高い. Bについては, 生理学実験により取得した被験者7名の0時~18時の心電図・呼吸波形の時系列データを用いて, 中央値を用いた統計解析アルゴリズムを構築し, 副交感神経活動を高精度に推定可能な心拍動の短期ゆらぎを導出する際に用いるデータ数を変化させて手法の評価を行った. その結果, データ数を100としたとき, 睡眠状態から覚醒状態に移行する際の短期変動, および睡眠時に睡眠段階の変化に伴う90分程度の長期変動を抽出できることを明らかにした. これは, 在宅医療支援システムの構築という意義に対して, 対象者がいつ・どこにいても生体情報を取得可能であり, 自律神経活動の長期変動をリアルタイムに推定可能なシステムを構築できたという点で, 重要性が高い. 以上2つの研究成果により, 心臓性突然死の予防に向けた長期循環器変動の解明と在宅医療支援システムへの応用に対して, 重要な知見を得ることができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は, 交付申請書に記載した「研究の目的」を達成するために立案した研究実施計画に沿って研究活動を行った. その結果, 当初計画していた解析手法よりも有用な解析手法・アルゴリズムを選択し, 研究実施計画に実施した「長期ゆらぎの生理学的特性の解明」および「リアルタイム自律神経活動推定法の開発」を達成できた. 以上より, 現在までの研究進捗状況については, おおむね順調に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策としては, 立案した研究実施計画に沿って, 「呼吸位相領域解析および相関カスケード法を組み合わせた心拍動の短期―長期ゆらぎの関係性解明」および「クラウド型生体情報取得技術を含む在宅医療支援システムの構築に向けた, 心臓性突然死のリスク指標の抽出」を行う. 心臓性突然死のリスク指標の抽出については, 心拍動の短期―長期ゆらぎの関係性解明およびリアルタイム自律神経活動推定法の開発を実現した上で取り組む必要があるが, 心拍動の短期―長期ゆらぎの関係性解明については, 循環器活動や自律神経活動の複雑な生理学的特性を評価する必要があるため, 基礎的な研究として心拍動の短期―長期ゆらぎの関係性解明に向けた生理学実験・生体信号解析を重点的に行うこととする.
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