研究課題/領域番号 |
13J04348
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
藤田 充俊 東京大学, カブリ数物連携宇宙研究機構, 特別研究員(PD)
|
キーワード | M-theory / AdS/CFT correspondence / 1/N expansion / Chern-Simons Theories |
研究概要 |
本研究において、ラージNゲージ理論(Nはゲージ群のランク)におけるオービフォルド等価性の研究を進めました。ここで、オービフォルドとは空間の鏡映のようなものですが、オービフォルド等価性とは、ラージNゲージ理論において、オービフォルドの対称性の元で不変なセクターにおいてオービフォルドを取る前の母関数とオービフォルドをとった後の子理論がプラナー極限で同一の物理量を持つという等価性です。複数枚のM2ブレーンの有効理論としての3次元のABJM理論は物性物理における赤外固定点を記述すると考えられていますが、その物性物理への応用を期待してこのラージNオービフォルド等価性を3次元のABJM理論と11次元のM理論におけるゲージ/重力対応に応用しました。通常の't HooftのラージN極限では、't Hooft結合を有限に保ったままラージN極限をとり、1/Nについての物理量の展開が種数展開のように見えます。一方で、M理論としてのABJM理論は、通常の't Hooft極限では記述できず't Hooft結合がNに比例して大きくなる事が知られています。この非't Hooft極限においては、物理量の1/N展開は一般にはできませんが、展開の主要項については't Hooft極限のプラナー極限の物理量を解析接続できると予想されています。更に、本研究ではフレーバーを含めたABJM理論と3次元のクイバー型のChern-Simons-matter理論の間のオービフォルド等価性を考えました。この理論には、グループのノードを変える射影のもとでのラージN等価性とChern-Simonsレベルを変える射影のもとでのラージN等価性があります。後者のラージN等価性の元で、BPSモノポール演算子は期待される振る舞いを見せました。そして、閉じ込め/非閉じ込め相転移の臨界温度はラージN等価性で変わらない事を示しました。Chern-Simonsレベルを変える射影のもとでのラージN等価性は、ミラー双対におけるプラナー等価性として説明できる事がわかりました。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究成果は、発表論文を雑誌に投稿後Phys. Rev. Dに掲載されました。期待される次の方針についても議論され、研究はおおむね順調に進行していると考えられます。研究の目的に記載のM理論における新しいラージN極限の研究は海外の研究所でも研究が進行中の新しい分野になっています。
|
今後の研究の推進方策 |
M理論をIIA型超弦理論へ次元縮小する事は重要な課題になっています。次元縮小により、ディラトンとメトリックのワープ因子は内部空間の座標に依存する事がわかっています。IIA型超弦理論への次元縮小は、M理論の膜ブレーン上で解析すると簡単化され、次元縮小の論文も何本か発表されています。また、オリエンティフォールドと呼ばれる操作を本研究のフレーバー付きのChern-Simons-matter理論に応用する事は興味深いです。オリエンティフォールドは、0、II (A, B)型超弦理論を用いてChern-Simons-matter理論に作用させる事ができると考えられています。場の理論側は、超弦理論のブレーン配位で説明できるため、オリエンティフォールドの作用を確かめる事は可能になっています。
|