平成25年度は、酸化タングステンの光励起状態について、茨城県つくば市のフォトンファクトリー、及び兵庫県佐用郡佐用町のX線自由電子レーザーSACLAを用いて、時分割XAFS測定を行った。フォトンファクトリーの実験では、WO3の懸濁液に400nmのレーザーを照射し、その時のWL3吸収端のXAFSスペクトルの変化を観測した。SALCAの実験では、放射光での100psの時間分解能に対して、フェムト秒の時間領域で起こる変化の観測を試みた。フォトンファクトリーの実験では、WL3吸収端が光照射前後で顕著な変化が観測された。これは、光吸収によりWO3で励起電子が生じたことに由来するものと考えられた。一方SACLAの実験では、芳しい結果が得られなかったが、フェムト秒のX線を使った実験でのノウハウが得られた。SACLAの実験については、実験を継続してゆく必要がある。 このように、平成25年度は不均一系における光励起状態観測実験に従事した。本年度フォトンファクトリーの実験で得られた結果から、光触媒などの固体触媒上での電子移動について、XAFSを用いることで固体触媒の光励起状態の局所構造変化・電子状態の変化が明らかになった。本研究課題の目標であった、固体触媒表面上での電子移動過程の解明に向けて、XAFSを用いることの有効性が確認された。X線をプローブとするPEEMであれば、電子移動の時空間情報が得られることが期待される。
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