研究課題/領域番号 |
13J04377
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
清水 悠平 九州大学, 薬学府, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 脱アシル化 / 脱保護 / トランスアミド化 |
研究実績の概要 |
アシル基はアミノ基の保護に用いられ、重要な保護基として利用されてきた。近年では、CH結合の活性化や速度論的光学分割など、有用な反応にアシル基が利用され、その重要性はさらに高まっている。しかし、アシル基の脱保護には一般に強酸や強塩基を用いる激しい条件が必要であり、利用出来る基質に制限があった。私はこういった問題点の解決を目指し、温和な条件、基質一般性の高い脱アシル化反応の開発を行っている。これまでの研究において私はアンモニウム塩添加条件下、トラスアミド化を利用した新たなアプローチによって、温和な脱アシル化反応の開発に成功した。強酸、強塩基を必要としない本反応では様々な官能基が共存可能であり、極めて基質一般性の高い反応となった。しかしながら、本反応ではその反応性が十分ではない点やアシル基側の有効利用が困難であるという問題点を残していた。本年度はこの問題点の改善に向け、ヒドラジン一水和物を求核剤として用いる脱アシル化反応の開発を行った。本反応では以前に報告した系と比べ、数十倍の反応性を示した。また、官能基共存性の向上にも成功し、ペプチドやアミノ糖などの複雑な基質に対しても有効な反応となった。更に、アシル基側を様々な有用な化合物に変換可能であるため、アミン側だけでなくアシル基側の有効利用も可能になった。 次に、私はCH結合活性化に頻繁に利用されるピリジンカルボニル基のアルコールによる脱保護に取り組んだ。ピリジンカルボニル基を用いた反応は数多く報告されているものの、これを温和に脱保護することは困難であり、強塩基を用いた反応が一般的である。検討の結果、中程度の収率ではあるが目的の反応が進行することを見いだした。本反応はピリジンカルボニル基を配向基として利用しているため、温和な条件下での反応が可能であり、その他のアシル基共存下においても選択的に目的のピリジンカルボニル基を脱保護可能である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度はヒドラジン一水和物を求核剤として用いる脱アシル化反応の開発に成功した。本反応では高い反応性と広い官能基共存性を示し、ペプチドやアミノ糖などの複雑な基質に対しても有効である。またピリジンカルボニル基のアルコールによる脱保護に取り組み、反応が触媒的に進行することを確認した。しかし、最終目的である加水分解の結果としてはまだまだ不十分である。更なる研究の加速が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
私は金属触媒を用いたアミドのアルコール分解に取り組んでいる。CH結合活性化反応において頻繁に利用されるピリジンカルボニル基を配向基として利用することで、金属触媒によるアミドの活性化が効率的に行われている。現在の結果では、反応温度50度程度で高い収率で目的物を得ることに成功している。また、ピリジンカルボニル基を配向基として利用しているため、選択的に脱保護が可能である。今後、触媒や配位子など更なる検討を行い、基質一般性の検討を行っていきたい。また、本反応においてはアルコキシドが系中で発生していると考えている。こういった知見を活かしながら加水分解に適用していきたいと考えている。加水分解においてはヒドロキシドを効率良く発生させることができれば、アルコール分解を超えて高い反応性を示すはずである。しかし、加水分解では当然触媒の水への安定性や溶解性も重要になってくる。こういった問題点を意識しながら様々な触媒を検討していく必要がある。現在までの初期スクリーニングにおいて、低収率ながらも一般的なアミドに対する加水分解の進行を確認している。アルコール分解で得られた配向基による知見なども参考にしながら、温和な条件下におけるアミドの加水分解の開発を目指したい。条件が決定後はその基質一般性の検討を行い、問題点があれば更なるチューニングを実施していく。
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