研究課題/領域番号 |
13J04429
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
鍛治 智子 立教大学, コミュニティ福祉学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 知的障害 / 家族員 / 親密性 / ケア / 自立 / 地域生活支援 |
研究概要 |
今年度は、知的障害者と家族員の「親密性」の具体的なありようを把握し、地域において定位家族に代わる知的障害者の生活基盤および支援体系を構築するという本研究の目的に対し、仮説構築に向けた調査活動、論文投稿などを行った。 知的障害者の地域移行・地域生活支援の先進事例として北海道伊達市の「だて地域生活支援センター」での聞き取りでは、ネットワーク形成や地域住民との関係形成の実践による「まち」全体での「一生涯の支援」の仕組みづくりについて聞き取り、福祉コミュニティ形成の可能性への示唆を得た。また「だて方式」と言われる事業利用者の家族会との連携のあり方は、家族員がケアをゆだねながら地域生活支援の仕組みに位置づく1つの形を示しており、仮説構築のための知見を得た。 また、知的障害者の母親たちが運営するNPO法人の知的障害者の母親7名および同団体が運営するグループホーム(GH)に入居する知的障害者7名を対象に聞き取りを行った。その結果、GH入居をめぐる知的障害者と母親の相互行為から親密性の形成・変容の要素に関する示唆を得た。また入居者たちも母親たちの多くも全寮制の特別支援学校を通じて以前からの関わりを持っており、母親たちが中心の団体であることが両者から肯定的に評価されていて、家族員が立ち上げた団体としての意義が見いだせた。 これらの調査と関連しながら本研究における理論的検討として知的障害者と親との関係を「居住の場」と「ケア」の観点から論文にまとめ、『立教大学コミュニティ福祉学研究科紀要第12号』に投稿し掲載された。本論文では障害者の「自立生活」の意義に加え、親との同居や親によるケアも地域生活において意義を持ちうる可能性を検討した。調査および理論的検討の知見から「親密性」、「自立」、「ケア」の概念を関連付けて次年度の調査枠組みの柱として位置づけ、調査設計に反映させることを検討課題とした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「だて地域生活支援センター」および知的障害者の母親たちによるNPO法人の2か所に聞き取り調査を行ったことで、知的障害者と家族員の親密性というミクロの視点と、地域生活支援の仕組みづくりというより広い視点の双方での知見が得られ、本研究の仮説構築および次年度の量的調査の実施に向けた検討が十分にできたといえるため。
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今後の研究の推進方策 |
今後は家族員が立ち上げた福祉NPOへの聞き取り調査の追加と、全国規模の知的障害者の家族会を対象に家族員がケアをゆだねていくプロセスにおける葛藤や家族員自身の取り組み、外部からの影響要因などについて量的調査を実施する。その調査によって仮説の検証を行い、家族員がどのようにケアを含めた知的障害者の生活支援に関わることで、親密性に基づいた地域生活支援の仕組みが構築できるかを考察していく。また、当初は質的調査・量的調査とも家族員の立場からの親密性のあり方に焦点を当てていたが、今年度の結果から親密性の形成における知的障害者と家族員の相互行為の重要性が見いだせたため、知的障害者への質的調査もさらに加えていく。
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