研究概要 |
京都大学生存圏研究所の矢野浩之教授の研究グループと連携し, バイオマス材料の材質(セルロース, キチン, キトサンなど), 由来生物, ナノサイズ制御表面官能基の制御などのパラメーターの最適化を進めたところ, 特に長さ方向のナノ構造に依存して化合物との相互作用の挙動が異なることを発見した。この挙動を親水性相互作用-キャピラリー動電クロマトグラフィー(HI-EKC)分離技術へ応用したところ, 糖鎖などの親水性化合物の分離パターンを変えることに成功した。本研究成果はElectrophoresis誌へ投稿され, 既にアクセプトされている。続いて, 開発した分離技術を実際のバイオ研究へ適用する際に求められるハイフネーション技術の習得のため, 米国イリノイ大学理学部のJonathan V Sweedler教授の下で長期研究を行った。神経細胞や脳組織に含まれる親水性低分子化合物, D型アミノ酸をターゲットとし, 生体試料の前処理・分離・質量分析などの一連の分析技術を最適化し, 合理的に結合する研究に従事した。マイクロ・ナノスケールでの試料精製(Stage Tip), 濃縮分離(EKC法), イオン化法(nanoESI法)などを組み合わせることで, 従来法よりも少ない試料量で高感度にD型アミノ酸を分析できるシステムの開発に成功した。これにより従来は困難であった低分子化合物の生体イメージングや単一細胞分析の実現が期待される。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り米国長期派遣を継続し, ハイフネーション技術のさらなる高性能化および生命科学研究での実践を行う。帰国後は, HI-EKC法をはじめとする要素技術をさらに応用し, 実用的な高性能バイオ分析法の開発を継続する。また, 微量試料をより精度良く制御するためのマイクロ・ナノ流体デバイスの研究に着手し, 細胞操作やナノスケール前処理などの技術を開発する。
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