研究課題/領域番号 |
13J04447
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
木下 陽平 北海道大学, 大学院理学院, 特別研究員(DC2)
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キーワード | InSAR / 伝搬遅延 / 伝搬遅延 / 集中豪雨 / 水蒸気 |
研究概要 |
本年度は主に、1. 2008年西濃豪雨のInSARデータを用いた事例解析、2. 雲解像モデルCReSSを用いたInSARで捉えた水蒸気シグナルの再現実験、の2件について研究を行った。1. 2008年に中部日本で発生した西濃豪雨の事例に対し、InSARによる水蒸気分布の検出および数値気象モデルを用いることによる豪雨発生メカニズムの究明を行った。本事例において、我々はInSARを用いて集中豪雨時における詳細な水蒸気分布を捉えることに世界で初めて成功した。InSARで得られた水蒸気シグナルに基づき、波線追跡法を用いて3次元水蒸気分布の推定を行った結果、シグナルの直上に高度9000mに達する飽和した領城を推定した。さらに我々は非静力学数値気象モデルWRFを用いて水蒸気シグナルの再現実験を行い、InSARでの水蒸気シグナルと同程度の伝搬遅延を引き起こす発達した対流を再現することに成功した。また、WRFの結果から、発達した対流においては降水粒子の影響も無視できないことを示した。本研究は、国際誌Geo physical Research Lettorsに投稿し受理された。2.2008年8月宮崎においてInSARで捉えた対流起源の水蒸気シグナルに対して、CRoSSを用いて対流の再現実験を行った。CReSSによる数値実験ではGPS遅延データの同化の有無に関係して3通りの実験を行った。結果、3時間毎にGPSを同化した実験が最も良くInSARでの水蒸気シグナルを再現していた。本研究に関しては、現在論文執筆中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はInSARを気象学的に活用するための研究として、2008年西濃豪雨の事例におけるInSARによる集中豪雨時の水蒸気分布の検出および数値気象モデルによる豪雨発生メカニズムの究明を行い、その研究成果は国際誌Geo physical. Research Lettersに論文として掲載された。また、我々はInSARにおいて検出が非常に困難だと思われていた対流起源の水蒸気シグナルを捉えたInSARデータを新たに6件発見することに成功した。現在それらデータの解析をCReSSの計算結果も用いながら行っているところである。これらのことから我々は研究計画はおおむね順調に進展しているものと考える。
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今後の研究の推進方策 |
現在進行中のCreSSによる再現実験の研究まとめ、論文として国際誌に投稿する。また、その他の水蒸気シグナル検出喜例についても数値気象モデルによる数値実験を行い、その成果をまとめることを目指す。また、数値気象モデルやGPSデータを用いた伝搬遅廷捕正の研究や、SAR時系列解析を用いた水蒸気シグナルの抽出についても、それらを実施する環境が整いつつあるのでそれら研究に取り組む。
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