研究課題/領域番号 |
13J04454
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
桑原 卓哉 東北大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | DFTB / 分子動力学法 / 化学気相成長法 / 量子化学 / アモルファスシリコン / 表面拡散 / 太陽電池 |
研究実績の概要 |
本研究は、量子化学計算手法を用いることにより、高劣化耐久性・高効率太陽電池の実現に向けて、その材料・プロセス設計指針を得ることを目的としている。平成26年度は、大規模電子状態計算プログラムの開発、及びシリコン系薄膜材料のプラズマCVD成長シミュレーションを行った。 1. 大規模電子状態計算プログラムの開発 平成25年度までに、密度汎関数強結合(DFTB)法を用いた分子動力学計算プログラムの開発を行った。しかし、現状では、1000原子程度のシミュレーションが限界であった。そこで、平成26年度は、Linear Scaling手法をDFTB分子動力学プログラムに導入した。具体的には、計算コストがO(N3) (Nは基底関数の数)となるハミルトニアンの直接対角化を回避し、密度行列探索法を用いて電子系の全エネルギーを計算することで、系のサイズに対して、計算コストをO(N)に減少させることに成功した。これにより、数万原子の系の量子分子動力学計算が可能になった。 2. アモルファスシリコンのプラズマCVDプロセスにおける表面平坦化機構の解明 アモルファスシリコンのプラズマCVDプロセスにおいて、表面・界面での欠陥密度を低減させるためには、原子レベルで平坦な表面の形成技術の開発が急務である。しかし、現在まで、その表面平坦化機構は理解されていない。そこで、DFTB量子分子動力学法と遷移状態理論を組み合わせた理論的解析を行った。量子分子動力学計算より、従来実験グループにより提案されていたSiH3ラジカルの表面拡散ではなく、ダングリングボンドの拡散こそが表面平坦化において本質的な役割を果たすことが分かった。また、遷移状態理論を用いた理論計算より、ダングリングボンドの拡散経路・拡散長を明らかにし、最適な成膜温度域の設計に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度は、当初の予定通り大規模電子状態計算プログラムの開発、及びシリコン系薄膜材料のCVDシミュレーションを行った。以上の研究より、従来提案されていたメカニズムとは全く異なるCVD成長機構の発見に成功した。その成果は論文として、Scientific Reportsに掲載された。故に、計画に沿って順調に研究が進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
開発した密度汎関数強結合法(DFTB)に基づく量子分子動力学プログラムを活用したシリコン量子ドットのプラズマCVDシミュレーションを行う。CVDシミュレーションより、成長表面での化学反応及びナノ粒子の自己組織化機構を明らかにし、ナノ粒子のサイズ・形状・表面構造を決定する因子を抽出することで、プロセス設計を行う。また、長時間計算を可能にする密度行列の時間発展法及び加速化分子動力学計算手法の開発にも取り組み、これまでは不可能であったCVDプロセスの全体像の可視化を試みる。
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