研究概要 |
過去の研究において、蛋白質結晶中に「隙間」を創ることができており、当該年度は結晶解析の結果から得られた薄い電子密度の解釈を行った。薄い電子密度のままでは解釈が困難であるため、新規な電子密度の改善法を導入した。 1. 長波長の入射X線を用いて構造解析を行う。 2. 電子密度のノイズ成分を削除するため、ローパスフィルターを用いる。 以上のことを行うことで、相互作用部位に棒状の電子密度を得ることができた。次に、蛋白質とリガンドの分子動力学計算を行った^<a)>。分子動力学計算から得られるトラジェクトリーから、リガンドにどれくらいの運動性があるのかを計算した。その結果、リガンドの平衡位置からの平均二乗変位(RMSD)が、おおよそ1.5~2.0Aであり、大きな運動性があるがことが分かった。実験で得られた電子密度と分子動力学からシミュレーションした電子密度の形状と位置がほぼ一致していた。つまり、蛋白質結晶中に「隙間」を創ることで、分子の動きを反映した電子密度を得ることができたと考えている。 しかし、問題点も残っている。それは項目1. に対応するが、なぜ入射X線を長波長にすることが電子密度の改善につながるのかということである。構造計算においていろいろなデータ処理やパラメーターを試したが未解決である。 (a) 理研 杉田博士との共同研究として実施した。Komuro et al., J Phys, Chem B (2013) 117, 2864-2871
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