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2014 年度 実績報告書

αキメリン遺伝子改変マウスを用いた神経回路形成メカニズムの解析

研究課題

研究課題/領域番号 13J04498
研究機関国立遺伝学研究所

研究代表者

香取 将太  国立遺伝学研究所, 個体遺伝研究系, 特別研究員(PD)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2016-03-31
キーワード神経回路形成 / αキメリン
研究実績の概要

神経細胞が軸索を伸ばす過程において、軸索は周囲の様々な因子にガイドされる。本研究では、Rac特異的GTPase活性化タンパク質の一つであるαキメリンの神経回路形成における役割に着目した。皮質脊髄路の軸索はαキメリンとEphA4受容体を発現する。その軸索がエフリンB3を発現する脊髄正中線の細胞に接触すると、エフリンB3→EphA4シグナリングの下流でαキメリンが活性化し、軸索の正中線交差が抑制されると考えられている。この仮説は主にエフリンB3、EphA4、αキメリンのそれぞれのノックアウト(KO)マウスの解析に基づくものだが、一方で、これらのKOマウスの脊髄では灰白質の正中部分が拡大している。この灰白質の形態異常は、上記のシグナリングの異常によって引き起こされたと考えられるが、そのメカニズムや皮質脊髄路軸索との関係性は不明であった。本研究では、この脊髄灰白質の表現型の解析を緒にして、神経回路形成メカニズムの一端の解明につなげることを目的とした。初年度は、αキメリンKOマウスの脊髄では誤ってEphA4陽性細胞が正中線に位置し、そこではエフリンB3陽性細胞が排除され、正中線でのエフリンB3バリアが壊れていることを示唆する結果を得た。また、皮質特異的αキメリンKOマウスでは、皮質脊髄路軸索が誤って脊髄正中線を交差し、αキメリンの細胞自律的な役割を明らかにした。次年度において、脊髄特異的αキメリンKOマウスを解析したところ、エフリンB3バリアが壊れ、誤って脊髄正中線交差をする皮質脊髄路軸索の増加が見られた。これは、αキメリンは軸索投射において細胞非自律的な役割を持つことを意味している。しかしながら、αキメリンがEphA4陽性細胞の正中線領域への進入を排除するメカニズムなど、まだ解析すべき点が多く残されている。最終年度では、この問題に対して取り組む予定である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

αキメリンKOマウスの脊髄において、灰白質の正中部分が拡大している。初年度は、この表現型を詳細に解析するために、発達に伴って、エフリンB3、EphA4陽性細胞の位置がどのように変化するのかをin situハイブリダイゼーション法により解析した。脊髄灰白質では、本来正中線に沿ってほぼ隙間なくエフリンB3陽性細胞の細胞体が分布するが、αキメリンKOマウスでは、その細胞同士の隙間が明らかに拡大し、本来見られないEphA4陽性細胞が正中領域で集積していた。この結果から、αキメリンKOマウスの皮質脊髄路軸索の誤った正中線交差は、エフリンB3陽性細胞の隙間が原因であり、皮質脊髄路軸索のαキメリンが関与していない可能性が浮上した。そこで、皮質特異的αキメリンKOマウスの皮質脊髄路を調べたところ、これまでの仮説通り脊髄正中線を誤って交差する軸索が増加していた。これは、αキメリンが少なくとも細胞自律的な機能を持つことを意味する。一方、次年度は、脊髄における細胞非自律的なαキメリンの役割を解析するために、脊髄特異的αキメリンKOマウスを作製し、解析した。すると、興味深いことに、このマウスでも脊髄正中線を越える皮質脊髄路軸索が増加していた。この結果は、αキメリンには細胞非自律的な役割もあるということを意味する。また、このマウスでは、正中線にあるエフリンB3バリアが壊れ、所々に隙間ができていた。この隙間が原因で、皮質脊髄路の軸索は誤って脊髄正中線を越えたと仮説を立てている。この仮説は最終年度で検証する。また、エフリンB3バリアに隙間ができたのは、EphA4陽性細胞が誤って正中領域に進入したことが原因であると仮説を立てている。EphA4陽性細胞が誤って正中領域に進入するメカニズムや、その進入がエフリンB3の隙間を生み出すメカニズムについては、最終年度に解析する予定である。

今後の研究の推進方策

脊髄特異的αキメリンKOマウスの脊髄では、エフリンB3バリアが壊れ、皮質脊髄路軸索は誤って正中線を越えていたことから、エフリンB3バリアが壊れたことが原因で皮質脊髄路軸索の誤った正中線交差を引き起こしたと仮説を立てているが、それらの因果関係に関しては十分解析できていない。そこで、脊髄特異的αキメリンKOマウスの皮質脊髄路の標識(子宮内エレクトロポレーション法で蛍光タンパク質を皮質脊髄路軸索に発現させる)とエフリンB3に対する抗体で免疫染色を行う。もし、エフリンB3バリアの隙間を皮質脊髄路軸索が誤って越えるところを捉えることができれば、上記の仮説を強くサポートする結果になると考える。
αキメリンKOマウスで、エフリンB3バリアが壊れたのは、EphA4陽性細胞が誤って正中線領域に進入したことが原因であると仮説を立てているが、まだ検証ができていない。そこで、子宮内エレクトロポレーション法を用いて片側脊髄のみで蛍光タンパク質を発現させ、そのとき同時にαキメリンをKO(あるいはノックダウン)する。このとき、蛍光標識されたEphA4細胞が正中線領域に位置し、そこでエフリンB3バリアが壊れていれば、上記の仮説を支持する結果になると考える。また、この実験で蛍光標識されたEphA4細胞が、どのような形態をしているのかを観察する。これにより、本来どのようなメカニズムでEphA4陽性細胞が正中線領域から排除されるのかという問題についても明らかにできると考えている。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2014

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] 脊髄正中線細胞に対するEphA4–α-chimaerinシグナリングの役割2014

    • 著者名/発表者名
      香取将太、岩里琢治
    • 学会等名
      日本神経科学学会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜
    • 年月日
      2014-09-11 – 2014-09-11

URL: 

公開日: 2016-06-01  

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