研究概要 |
本研究は, 位相共役光による微小宇宙デブリ除去を目的とし, レーザー利得媒質中での四光波混合を行うものである. 特に, システムをシンプルにするため, レーザー発振器中のレーザー利得媒質に位相共役光発生装置(位相共役鏡)としての役割を与え, 外部光源が不必要な系をデザインした. ターゲットからの信号光をレーザー媒質に入れると発振器中を対向して行き来する光と合わせて3方向から光が入射し, 四光波混合配置ができる. レーザー媒質は一様に励起されている必要があり, 3つの光が干渉すること媒質内部で光強度に依存した利得変調が発生し, 三次元利得回折格子で光が回折して位相共役光が発生する. 平成25年度は, 位相共役光発生用のレーザー発振器型位相共役鏡として, 100WのCWレーザーダイオード(LD)を利用した側面励起型Nd : YAGレーザーをデザインした. レーザーヘッド製作期間中はフラッシュランプ励起QスイッチNd : YAGレーザーを用いて実験を行ったが, ビーム品質(特に縦モード)が悪く, 過干渉距離が数cm程度であったため, 信号光と発振器中の光が干渉せず位相共役光が発生しないことが分かった. この問題は, インジェクションシーディング(種光注入同期法)により解決可能であると考え, 種光用のCW発振Nd : YAG DPSSレーザーを購入し, 空間フィルターとアイソレーターを通して発振器内の光路に重ねた. 過干渉距離の問題は上記のLD励起CW Nd : YAGレーザーを用いることで改善可能であるが, 位相共役光出力や波面補正効果の比較のためCW発振とパルス発振両方での実験が必要であると考え, パルス光をシングルモードで発振させるインジェクションシーディングを行うことに決めた. また, 同時に数値計算を行い, 位相共役光出力の励起光強度に対する挙動を調べた. 計算では非線形マクスウェル方程式から4つの積分微分方程式を導き, 時間領域のみを離散化するライン法を用いて境界値問題を解くことに成功した. 発振中のレーザー媒質での四光波混合を数値解析した過去の研究は調べた限りではなく, 位相共役光の振る舞いの解明や, 出力の最適化のために役立てる.
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