本研究は、植物のみで非常に拡大したRNA結合蛋白質ファミリーであるPPR蛋白質に着目し。その特性を利用することで様々なRNA配列に結合する人工RNA結合蛋白質を構築し、RNaseをそれと融合することで標的特異的な細胞内RNA分解系を作成しようというものである。昨年度までに、1. 動物培養細胞を用いたPPR蛋白質とRNAの結合の検出システム、2.任意RNA配列に結合するPPR蛋白質の作成方法について確立できた。現状では成功確率は低いが、完成したカスタムPPR蛋白質を用いて、RNA分解酵素や翻訳抑制因子のようなエフェクタードメインを連結し、細胞内mRNAの翻訳抑制手法の構築を目標に今年度は研究を行った。まず、既知の様々なRNase domainや翻訳抑制因子などをcloningし、それらと昨年度作成したPPR蛋白質を融合し、reporter assayを用いてRNA分解、翻訳抑制効果を検証した。その結果、最大で50%程の標的蛋白質の抑制効果が見られた。さらに、翻訳抑制可能なドメインのスクリーニングが完了したので、実際に内在遺伝子を標的でき、発現抑制が可能なカスタムPPR蛋白質を作成した。その結果、内在mRNAに対しても検証を行い、20-30%程度ではあるが、抑制効果が見られた。今後、PPRと抑制ドメイン間のリンカー配列の検討や、PPR蛋白質の発現安定性などを改良し最適化することで、さらに機能的な人工RNaseが作成できると考えている。
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