研究課題/領域番号 |
13J04583
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
鈴木 秀文 千葉大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1) (00793770)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | TLP / p53 / TFIIA / transcription / gene regulation / Taspase1 |
研究実績の概要 |
TLPとp53によって活性化されるp21遺伝子の上流プロモーターにTATA box配列を挿入するとTLPによってプロモーター活性が抑制されることがわかった。TFIIAとの結合性を持たない変異型TLPではTATA box挿入p21プロモーターの抑制は起こらなかった。これらの結果から、TLPがp21上流プロモーターを活性化するためには、p53の標的配列を有することに加えて、TATA boxを有していないことが重要であるものと考えられる。 次に、TLPがp53タンパク質に与える影響を調べた結果、TLP量依存的にp53タンパク質が安定化され、その結果p53四量体の量も増加していることがわかった。しかしながら、TLPがp53四量体の形成を特異的に促進している結果は得られなかった。このことから、TLPによるp53活性化は、主にp53タンパク質の安定化によるものであることが示唆された。 以上のp53解析に加えて、TLPのTFIIAに与える影響の解析も行った。上述のように、TLPはTATA boxを抑制する作用があることがわかっており、このことから、TLP-TFIIAとの関係性に着目してTLPがTATA boxプロモーターに与える影響を調べた。TFIIAは前駆体をもち、TFIIA前駆体は細胞内でプロセシングされることで転写活性の高い成熟型となることが知られている。解析の結果、TLPがこのプロセシングを抑えていることがわかった。この解析から、TLPはTFIIAの成熟化を阻害することでTATA boxプロモーターに対して抑制作用を発揮していることが明らかになった。TFIIA成熟化を制御する因子はこれまでに報告されておらず、TLPがTFIIA成熟化を阻害する新規の機能を有していることを示すことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
TLPがp53の転写能を活性化する機構は主にp53タンパク質の安定化によるものであることを示し、多くのp53標的遺伝子がこの機構で制御されていることを明らかにできた。これに加えて、TLPがTFIIAの活性制御に関わっていることを示すことができたため。
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今後の研究の推進方策 |
今後はRNA-seqによる網羅的解析を行い、どれだけ多くの遺伝子がTLPによって制御されているかを示す予定である。 これまでTLPがp53依存的にTATA-lessプロモーターを活性化することを報告してきたが、TLPがp53非依存的に制御するプロモーターも見つかっている。このような、TLPが直接的に制御するプロモーター上での転写メカニズムを詳しく調べていく予定である。これによって、TLP自身の転写機能の本質に迫ることができるだけでなく、TLPによるp53依存的な転写活性化機構のさらなる理解が期待できるものと思われる。
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