研究課題/領域番号 |
13J04594
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
宮本 将平 九州大学, 生体防御医学研究所・ゲノム病態学分野, 特別研究員(DC2)
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キーワード | Coxsackievirus B3 / miRNA / miRNA相補配列搭載CVB3 / miR-1 / miR-217 / ショ糖密度勾配超遠心 / mGM-CSF / mGM-CSF搭載CVB3 |
研究概要 |
本年度は以下の計画を実施した。 I組織特具的miRNA相補配列挿入CVB3 (Coxsackievirus B3)の作製と安全性向上の確認実験 これまでの自他によるCVB3 in Vivo投与実験より、心筋、膵臓に強いウイルス増殖親和性及び炎症応答を認めたことから、本副作用を克服するため、筋および膵臓特異的に発現するmiRNA、miR-1(筋特異的)、miR-217(膵臓特異的)の相補配列を搭載したCVB3-miRTを作製した。その結果、野生型CVB3 (CVB3-WT)接種では膵炎、筋炎が頻発するのに対し、CVB3-miRT接種では抗腫瘍効果はCVB3-WTと同等であるが、膵、肝機能異常は認められず、飛躍的な安全性の向上が確認できた。 IICVB3大量生産と精製 先ず立案時研究計画に従って実験を進め、さらに諸条件を検討した結果、5~45%ショ糖密度勾配超遠心法によってウイルス蛋白質分画の分離に成功した。さらに、前臨床試験に向けサルの投与量で精製を行ったところ、ウイルス蛋白質の分離に成功し、かつウイルス力価も40%程度の減少で抑えられた。 平成26年度計画 I抗腫瘍免疫誘導GM-CSF遺伝子挿入CVB3の作製と抗腫瘍効果確認実験 安全性向上遺伝子改変CVB3-miRTの作製が早期に完了した為、次年度の計画である強力な免疫刺激サイトカイン、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)遺伝子をCVB3に搭載した免疫誘導による抗腫瘍効果増強に着手した。本年度では、mGM-CSFをCVB3ゲノムのFirstATG直下にウイルス由来プロテアーゼの切断認識配列とともにmGM-CSFを挿入したCVB3-mGM-CSFを作製した。その結果、in Vivo実験に使用可能な高力価のCVB3-mGM-CSFを得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画通り平成25年度に下記の研究を行った。①コクサッキーウイルスB群3型(CVB3)の安全性向上を目的に、CVB3を遺伝子改変することで、各組織に特異的に発現するmicro RNAの相補配列を搭載したCVB3-miRTの作製に成功した。②マウスin Vivo研究を実施し、CVB3-miRTは野生型CVB3と抗腫瘍効果の上では同等であるが、野生型CVB3で見られた膵、肝機能異常は認められず、飛躍的に安全性が向上していることを明らかにした。③ショ糖密度勾配超遠心法を用いてCVB3の精製法を確立した。 また、平成26年度に行う予定であった抗腫瘍免疫誘導遺伝子改変CVB3-mGM-CSFの作製にも着手し、すでにCVB3-mGM-CSFの作製に成功した。 以上の理由から、「当初の期待以上の研究の進展があった」と思われる。
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今後の研究の推進方策 |
抗腫瘍免疫誘導GM-CSF遺伝子挿入CVB3の作製と抗腫瘍効果確認実験 前年度に前倒しで作製した抗腫瘍免疫誘導遺伝子改変CVB3-mGM-CSFを用いて同系マウス皮下移植腫瘍(原発)あるいは遠隔転移腫瘍に対する抗腫瘍免疫誘導能について対照ウイルス治療群と比較検討する。 マウスおよびカニクイザルを用いたCVB3用量漸増試験 前年度に引き続き、CVB3の大量精製をGMP準拠において行い、前臨床研究を実施していく。当初の計画通りマウスを用いてCVB3ウイルスの用量漸増試験を行い、安全性を検証しMTDを決定する。その結果を参考に、カニクイザルを用いた精製CVB3ウイルスの容量漸増試験開始に向けた諸準備を完了し、受け入れ体制が整い次第、カニクイザルにおける血液および臓器毒性の有無、投与ウイルスの薬物動態を詳細に検討する。
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