研究実績の概要 |
本年度は、昨年度に引き続き、対象疾患の病態解析に必要な単球、マクロファージをiPS細胞から分化誘導し、活性酸素産生、サイトカイン産生、シグナル伝達などの機能解析を行った。また、iPS細胞由来単球、マクロファージは、末梢血より分離したそれぞれの細胞と比較することにより、研究材料としてiPS細胞由来免疫細胞が代替可能かについての検証を行った。 また、先天性に単球やマクロファージなどの自然免疫細胞の異常が起こっていることが考えられている中條―西村症候群 (NNS)疾患特異的iPS細胞 (NNS-iPS細胞)から 単球、樹状細胞、マクロファージを分化誘導し疾患再現実験を行った。さらに、Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeat(CRISPR/CAS9)(Hockemeyer D et al. Nature Biotechnol. 2011,731-734, Ran FA et al. Nat. Protoc. 2013.(11): 2281-308.)という高効率な遺伝子改変法を用いて、NNS-iPS細胞の責任遺伝子であるPSMB8変異箇所の遺伝子修復と健常ES細胞への変異遺伝子導入を行い、それぞれと同じ遺伝的バックグラウンドをもつNNS患者由来変異遺伝子修復細胞と正常細胞由来変異遺伝子導入細胞を作製した。NNS-iPS細胞から分化させた単球では、IFNgamma+ TNFalpha刺激後のキモトリプシン様活性が、健常ES細胞に比して低く、またIL-6とIP-10の産生が上昇していた。一方、変異遺伝子を修復したNNS-iPS細胞から分化させた単球では、刺激後のキモトリプシン様活性の有意な上昇とIL-6、IP-10産生の減少が、また変異遺伝子を修復導入した健常ES細胞ではその逆の結果が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請者らは既に、疾患特異的iPS細胞を用いた病態再現に成功し、疾患特異的iPS細胞を用いることにより創薬開発を実現するための技術的課題を克服したと言える。その成果を、成果を、8th Internatilnal congress of familial Mediterranean Fever and systemic auto-inflammatory diseases (ISSAID), 2015, (ドレスデン、ドイツ、ポスター)と Cira/ISSCR 2016 International symposia(京都、ポスター)にて発表した。また、NNS患者では、末梢血の好中球における刺激後の過剰な活性酸素産生が起こっていることを見出し、8th Internatilnal congress of familial Mediterranean Fever and systemic auto-inflammatory diseases (ISSAID), 2015, (ドレスデン、ドイツ、ポスター)に臨床の先生方と共に発表した。
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