研究課題
1. 巨核球のclonal expansionに対するBDNFの作用マウス骨髄から巨核球前駆細胞を分離し、MegaCult-Cを用いたコラーゲンゲル3D培養法によって巨核球前駆細胞の自己増殖能 (clonal expansion)を検討した。その結果、骨髄由来巨核球前駆細胞はBDNFの存在下にて有意な自己増殖の促進が認められた。次に、巨核球前駆細胞を液体培地にて巨核球へと分化させ、FACSでその分化成熟段階を評価した。この結果はヒト巨核球由来細胞株MEG-01で認められたBDNFの増殖促進作用と極めて近いものであり、BDNFはマウス正常巨核球においても自己増殖促進作用を有する新規巨核球分化関連因子であると考えられた。2. 巨核球の成熟に対するBDNFの作用巨核球の成熟の指標はendomitosisによる多核化(多倍体化、polyploidy)と血小板産生時に認められるproplatelet formationの2つが代表的であり、これら2つの指標がBDNF存在下でどの様な影響を受けるかを検討した。巨核球の多核化はFACSにより実施した。検討の結果、巨核球の多核化に対するBDNFの有意な影響は認められなかった。次に、proplatelet formationに対するBDNFの作用を検討した。その結果、proplatelet formationに対するBDNFの有意な影響は認められなかった。以上の結果から、BDNFは巨核球の成熟に対しては促進的な作用を呈さないサイトカインであると考えられた。
2: おおむね順調に進展している
平成26年度はこれまでに確立した巨核球に関する各種解析手法を駆使し、BDNFの巨核球に対する生理作用の解析を実施した。解析の結果、BDNFはマウス正常巨核球に対して自己増殖 (clonal expansion)を促進する一方、多核化やproplatelet形成に代表される巨核球の成熟には関与しないことが明らかになった。これらの生理作用はmegakaryocyte-colony stimulating factor (MEG-CSF)と呼ばれる巨核球造血関連サイトカインの作用に極めて類似するものである。今後はマウスへのBDNF投与などによりin vivoにおけるBDNFの巨核球・血小板造血への関与を詳細に検討する。BDNFノックアウトマウスの導入・解析と、巨核球BDNF mRNAの解析については遅れが認められるものの、in vitroにおける巨核球造血の解析で一定の成果を得たことから、概ね期待通りの研究の進捗状況であると評価する。
1. 骨髄におけるBDNFの産生細胞の探索In vitroの実験系にてマウス正常巨核球に対してBDNFは自己増殖促進作用を呈したことから、in vivoにおいてもBDNFは巨核球造血に積極的に関与していると考えられた。そこで我々は骨髄内でのBDNF産生細胞の探索を実施することで、個体内でのBDNFと巨核球との関連性をより詳細に検討する。骨髄内BDNF産生細胞は骨髄凍結組織標本を用いる免疫組織化学染色 (immunohistochemistry, IHC)により実施する。2. 巨核球分化成熟因子としてのBDNFの作用メカニズムの解明巨核球の分化成熟関連転写因子とBDNFの相互作用の解析に向けて、幼若巨核球のBDNF添加・非添加培養条件を検討し、cDNA合成などの解析試料の作製などを進める。BDNFの作用による巨核球分化成熟関連転写因子(特に自己増殖促進に関与する転写因子)の変動をqRT-PCRを用いて解析する。
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http://www.med.yamanashi.ac.jp/clinical/clin0lab/