これまでのin vitroの検討から、BDNFはマウス正常巨核球の自己増殖(clonal expansion)を促進することが明らかになった。そこで平成27年度はin vivoにおけるBDNFの巨核球・血小板造血への関与を検討した。血小板減少症モデルマウスにおいてBDNFは血小板数の回復を促進すると考え、本検討では抗マウスGPIb抗体カクテル投与による一過性血小板減少症モデルマウスを用いたBDNF投与実験を実施した。しかしながら、今回のモデルではBDNF投与マウスの有意な血小板数回復は認められなかった。本課題の今後の方針は、骨髄抑制モデルなど他の血小板減少症モデルにおけるBDNFの血小板・巨核球増殖促進作用の検討が挙げられる。 一方、申請者は本課題以外に血小板活性化受容体CLEC-2の血小板造血における役割に関する研究も手掛けた。CLEC-2の生体内リガンドである膜蛋白、ポドプラニンを発現した新規の間質細胞を同定し、同細胞のポドプラニンと巨核球のCLEC-2が結合して全く新しいニッシェが形成されることを見出した。このニッシェで、ポドプラニン刺激で巨核球の増殖が促進され、CLEC-2の刺激で間質細胞が産生するサイトカインが巨核球のproplatelet形成を促進するという、画期的な機序を解明した。
|