研究課題/領域番号 |
13J04625
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
片平 浩孝 北海道大学, 大学院地球環境科学研究院, 特別研究員(PD)
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キーワード | 寄生虫 / 生物標識 / 通し回遊魚 |
研究概要 |
寄生虫は、一般的に「宿主に害を与える」という悪いイメージで捉えられがちであるが、水産分野においては「生きた標識」として宿主の系群識別、移動、食性、資源変動さらには系統進化といった幅広い分野に活用されてきた。本研究の目的は、最新技術との併用ならびに整合性を計ることによってこれら寄生虫の有用性を拡張し、従来の技術のみでは知り得ることのできなかった通し回遊魚における未知の生態を明らかにすることにある。 本課題では、国内の様々な水域に出現すること、および複数の生活史型が報告されていることを鑑み、1)遡河回遊性(川で産卵、海で成長)のウグイ類と、2)降河回遊性(川で成長、海で産卵)のニホンウナギをモデル生物として取り組む計画である。本年度は初年度であるため、研究の基盤となる全国的サンプリングを進めるとともに、調査を通じて副次的に得られた未記載の寄生虫種ならびに宿主-寄生虫関係について論文化および学会報告した。 1. ウグイ類では、北海道網走川・天塩川・鵡川・茂辺地川、青森県宇曽利湖、栃木県那珂川、山口県粟野川、佐賀県松浦川、宮崎県本庄川産の個体を解剖し寄生虫相解明に努めた。ニホンウナギでは、各地の漁協・小売り業者と交渉し、ウナギサンプル確保に労力を費やした。以上の調査は今なお継続中であり、次年度も引き続き全国的採集を試みる予定である。 2. これまで得られた寄生虫標本の比較検討により、鉤頭虫の未記載種1種を見出し、国際誌に記載論文を投稿した。また、北海道内での調査中に発見した魚類寄生性ヒルの宿主-寄生虫関係について簡易的にとりまとめ、学会で報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
全国的採集の結果、今後の解析に必要な寄生虫サンプルが集積されつつある。また、これらの調査を通じて、いままで知られていなかった未記載の寄生虫種や宿主-寄生虫関係を見出し、その成果の一部を論文化するに至った。以上の理由から、申請時の計画に沿っておおむね順調に進展しているものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の核心は、従来の寄生虫調査に遺伝解析や耳石微量元素分析などの最新技術を複合的に組み合わせることにある。次年度は、初年度に調査を実施できなかった地域にて追加採集を実施することに加え、宿主魚類の耳石微量元素分析や寄生虫サンプルを用いた集団遺伝解析に取り組む計画である。なお、調査活動を通じて得られた寄生虫の国内初記録、新宿主記録、未記載種の情報を引き続き記載論文としてまとめ、成果を速やかに公開していく。
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