研究概要 |
本研究は、海洋微細藻類と微生物間の相互作用を解析することにより、海洋有機炭素生成、分解、蓄積過程を包括的に理解することを目的としている。平成25年度は、代表的な微細藻類培養株から光合成産物を含む細胞抽出物質を作成し、これらを外洋域で採水した海水に添加し、添加した溶存有機炭素および海洋細菌の動態を詳細に解析することを目的とした。具体的には、外洋性微細藻類5株(Synechococcus sp. clade V, Pelagomonas calceolate, Thalassiosira oceanica, Chrysochromulina camella, Pycnococcus provasolii)を培養後、これらの細胞を破砕し、微細藻類抽出物質を作成した。これらの抽出物質の有機炭素濃度およびタンパク質濃度の測定、さらに3次元励起蛍光スペクトル法による腐植様物質の定量を行った。また、KH-13-7次白鳳丸航海「生態学・生物地球化学の全太平洋3次元マッピング」(2013/12/11-2014/2/12)に参加し、微細藻類抽出物質添加培養実験を実施した。具体的には、採取した海水に上記藻類抽出物質を添加し、現場海水温で12~20時間培養した後、フローサイトメトリ、高精度セルソーター、微生物群集構造解析試料、溶存態有機炭素解析試料を採取した。フローサイトメトリを用いた細胞数計数の結果から、Chrysochromulina camellaおよびPycnococcus provasolii抽出物質添加区で顕著な細菌数の増加が見られた。これらの細菌群を高精度セルソーターによって選別し、細菌の16SrRNA遺伝子を標的としたT-RFLP解析を行った。その結果、Pycnococcus provasolii抽出物質添加によって増殖応答したと考えられる細菌系統群由来のピークが見られた。今後、各抽出物質添加区における詳細な細菌群集構造解析を次世代シーケンサー(Ion Torrent)を用いて行っていく予定である。また、並行して溶存有機炭素濃度および藻類抽出物質のアミノ酸組成解析を行っていく予定である。
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