研究課題/領域番号 |
13J04638
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
山本 孟 京都大学, 大学院文学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | ヒッタイト / 古代オリエント / 外交 / 条約 / 支配政策 / 国際関係 / 国際情報交換 / シカゴ |
研究概要 |
本研究は、王碑文・条約文書・書簡を中心とする楔形文字粘土板史料を用い、ヒッタイトの国内における支配政策がその外交政策にも適用されていたことを明らかにすることを目的とする。またそれによってヒッタイト王国を視座に紀元前2千年紀後半の古代オリエントの国際関係を展望することが本研究の最終目的である。具体的には、国内支配政策に関する研究と外交に関する研究という二段階のアプローチを試みる。 平成25年度は、主に1. ヒッタイトの支配政策の研究と、2. 外交に関連する資料の収集を行った。 1. 帝国時代における王と副王の条約文書を史料に、それ以前から続く支配政策が同時代に連綿と受け継がれている点を明らかにした。傍系の王族に地方支配を委任する古王国時代以来の政策と、中王国時代に始まる誓約文書を発行して王への忠誠を誓わせる政策が、王位継承の見込みのない王子たちが副王として辺境国を治めた帝国時代の支配体制の基礎となったのである。その成果は学術雑誌『史林』(史学研究会発行)において公刊した。 2. シカゴ大学近東言語文明学科にて資料を収集し、「(条約を)結ぶこと」を意味する動詞の文献学的分析を行った。この語が記される粘土板文書史料を特定した上で、これらを読解し、語用の分析を行った。これにより、ヒッタイトの人々にとって条約文書とはより高位の権威に押し付けられる(神から王あるいは王から臣下)、強制的かつ不可変的な関係を創造する文書であるが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成25年度に計画していたヒッタイトの支配政策研究については、主な史料を読解し、その全体像を把握することができた。また、その研究成果を学術雑誌に公刊した。さらにシカゴ大学留学中、26年度に予定していた外交に関する研究についても実施し、一定の成果があった。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの外交に関する研究の成果は、今年度、日本オリエント学会第56回大会で口頭発表の上、学術雑誌『オリエント』(日本オリエント学会発行)において公刊する予定である。また、その他に外交に関連すると考えられるヒッタイト語の語用分析は引き続き行う。その上で、関連史料の読解・分類によってヒッタイトの内政と外交政策が一致していたことを明らかにし、当初の研究計画通りこれらの成果をまとめて博士論文として提出する。
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