1.研究の目的及び方法:可燃物が壁近傍で燃焼するとき、壁からの熱フィードバックを受けて燃焼が激しくなる。熱フィードバックのメカニズムをモデル化しその影響を定量化できれば、自由空間での燃焼性状から壁際や隅角部での燃焼性状を予測できるようになり、火災安全設計における設計火源(想定する燃焼性状)の合理化に寄与できる。本研究では、可燃物として軟質ポリウレタンの立方体(500×500×500mm、以下ウレタンブロック)を用い、自由空間、壁際、隅角における燃焼性状を測定した結果から熱フィードバックのモデル化を試みた。2.研究の進行状況及びこれまでの成果:(1)火炎傾き結果の整理:ウレタンブロックの燃焼実験のインターバル写真から30秒間隔毎に火炎の傾斜角を読み取って、離隔距離と発熱速度との関係を整理した。(2)火炎傾斜モデルの提案:既往の岡モデルを改良して点火源、壁際の条件での火炎傾きを定式化した。また、岡モデルで重要なパラメーターである巻き込み係数を無次元発熱速度から推算する方法を検討した。(3)外部熱流束による火炎伝播速度の測定実験:壁からの熱フィードバックを受ける可燃物の燃焼面での火炎伝播速度を定量化するため、種々の外部熱流束を受けた時の火炎伝播速度測定を行った。3.研究の意義と重要性:点火源の条件で壁によって火炎が傾くことを、壁と可燃物との離隔距離および無次元発熱速度によってモデル化した。今後、壁際での火炎性状予測に使うことができる。また、壁と対向する燃焼面での火炎伝播速度を壁からの熱フィードバックによって定量化するための基礎データを得た。4.今後の計画:壁際と同じ方法で隅角部での実験結果から火炎の傾斜モデルを作り、壁からの熱フィードバックを定量化した結果と合わせて周壁の影響を受けるウレタンブロックの燃焼モデルを提案する作業を進めている。
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