研究課題/領域番号 |
13J04681
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
河口 真志 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | スピントロニクス / 表面・界面 / 電界効果 / 磁性 |
研究概要 |
本研究では、強磁性金属超薄膜における電界効果についてその起源の解明を目指す。そのための方法として、面や界面において自発的に生じた電界によって誘起されるラシュバ効果に着目した。本年度においては、強磁性金属薄膜においてラシュバ効果によってもたらされると考えられる電流誘起の有効磁場の検出方法確立と、その方法を用いた有効磁場の試料構造に対する依存性の調査を行った。 電界効果との関連を探るためにゲート電極を取り付けた素子においては、従来の交流電流を用いた測定方法は適応困難であり、新たに、直流電流を用いた静的な条件で測定でき、かつ測定精度の良い検出方法が必要となった。 そこで、横抵抗の変化を利用して有効磁場を検出することを試みた。強磁性金属薄膜においては、ラシュバ効果や非磁性層のスピンホール効果の影響によって生じた有効磁場が磁化の向きを変え、その結果横抵抗が変化する。これらの効果による横抵抗の変化は、別に印加した外部磁場に対して異なる依存性を見せる。それを利用して、これら二つの効果による有効な磁場の大きさを各々決定することに成功した。この成果によって各々の効果による有効磁場や、電界効果が有効磁場にもたらす影響を精密に計測することが可能となった。 次に、確立した測定方法によって有効磁場の試料構造に対する依存性を調査した。最近、ラシュバ効果が起源とされてきた有効磁場に対して、その起源に疑問をなげかける結果が報告された。そのため、この有効磁場の起源を探ることが本研究を進める上で重要となってきた。 そこで、膜構成の異なる試料を用意し、それぞれについて有効磁場の大きさを測定した。その結果、ラシュバ効果によるものと考えられてきた有効磁場はそれだけでは説明できないことが明らかとなった。このことは強磁性金属超薄膜における面内方向の電流誘起の有効磁場の起源を明らかにする上で重要な成果であると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
強磁性金属超薄膜における電流誘起の有効磁場に関して、従来のような交流電流による計測万伝ではなく直流電流によって静的な条件下で計測する方法を確立した。このことによって、電流誘起の有効磁場と電界効果との関連を探ることが可能となった。これは次年度以降において研究していく上で重要な成果である。また、その方法を用いて様々な膜構成の試料を計測することで、電流誘起の有効磁場の起源を明らかにする上で重要となり得る成果が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
強磁性金属超薄膜において、界面や表面における自発的な電界が起源とされるラシュバ効果の影響で、電流に誘起されると考えられている有効磁場が、外部から加えた電界によってどのように変化するのかを探ることで、強磁性金属超薄膜における電界効果の起源に迫る。ただし、この有効磁場に関しては、ラシュバ効果が起源であるのか定かではない。そのため、有効磁場の起源についても調査を行っていく。また、この有効磁場がラシュバ効果によるものではない場合には、電界効果との関連が期待できない可能性があるため、強磁性金属超薄膜におけるスピン波と電界効果等、他の切り口からのアプローチを試みる。
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