研究課題
1. FeLIXの遺伝子座の決定内在性ネコ白血病ウイルス(enFeLV)のenv領域の役割を調べるため、イエネコにおいてFeLIX 蛋白をコードする遺伝子の遺伝子座をin silico解析により決定した。Ensembl(ensembl.org)で新たに公開されたネコゲノム情報を用い、FeLIX遺伝子の遺伝子座はB4染色体であることを決定した。現在、FeLIX周辺の種間で保存された領域にプライマーを設計中で、イエネコ以外のネコ科動物におけるFeLIX遺伝子またはその領域を検出するためのPCR系の確立を試みている。また、大型ネコ科動物のゲノムDNAの収集を行っている。2. レトロウイルス・コロナウイルス以外のウイルスにおける受容体非依存性感染の検討受容体非依存性感染機構を用いると、ウイルスは受容体干渉現象による制限を受けることなく繰り返し1つの細胞に感染することができるため、増殖に有利である。この感染様式はレトロウイルスおよびコロナウイルスで起こることが報告されている。この生存に有利な感染機構を採用しているウイルスは他にも多数存在するとみられる。我々はパラミクソウイルス感染にも受容体非依存性感染機構が関与していると考え、2012年に香港で初めて報告されたネコモルビリウイルス(FmoPV)について調べることにした。イエネコの尿を採取し、FmoPV検出RT-PCRを行い、陽性となった尿を猫の腎臓由来CRFK細胞に接種し、イエネコ3匹からFmoPVの分離に成功した。これら3株のゲノム配列を明らかにし、シュードタイプウイルス作製のためのエンベロープ遺伝子(FおよびH)を発現プラスミドにクローニングした。
1: 当初の計画以上に進展している
いずれの研究成果も順調に進んだ。研究1の結果から、イエネコのFeLIXの遺伝子座が明らかになったことで、他のネコ科動物との遺伝子レベルでの比較が可能になった。ここから、FeLIXの存在意義が明らかになることが期待される。大型ネコ科動物でもFeLIX様の内在性レトロウイルス由来蛋白質が存在するのか、存在するとすればどのような変異が入っているのか、それによってどのような機能変化が起こっているのかなど、大変興味深い。研究2は研究計画を超えた成果であり、国内の他のグループがなし得なかったウイルス分離を成功させたことは非常に意義深い。このネコモルビリウイルスは腎不全との関わりが報告されており、その受容体非依存性感染機構を含む感染機構の解明は、感染症により腎炎が起こる機構を説明する第一歩となる可能性がある。獣医学・生物学およびウイルス学的に大きなインパクトのある内容であり、これからのさらなる研究の発展が期待される。これらの素晴らしい成果を上げたことに加え、様々な学会、媒体での積極的な発表を行ったことも、熱心に研究に取り組んできたことを裏付けている。よって、今年度の研究進捗状況は「期待以上の研究の進展があった」と言える。
1.FeLIX新たに集めた大型ネコ科動物を含むネコ科動物のゲノムDNAを用い、FeLIX検出PCRを行い、FeLIX遺伝子の保有状況を調べる。また、それぞれのFeLIX遺伝子をクローニングし、配列を調べ、イエネコのFeLIX遺伝子と比較を行うことで、機能解析を行う。また、野外におけるFeLV-Tの病態解明を行うため、国内外でサンプリングを行い、FeLIX発現細胞系を用いた診断法を確立する。2.レトロウイルス・コロナウイルス以外のウイルスにおける受容体非依存性感染の検討FmoPVを様々な培養細胞に接種し、非感受性の細胞をみつける。また、作製したプラスミドを用い、VSVシュードタイプウイルスを作製する。このシュードタイプウイルスを、イエネコ血清存在下でFmoPV非感受性細胞に接種し、レポーター遺伝子の発現の有無により感染を判定する。また、FmoPV非感受性細胞にイエネコのSLAMまたはNectin4を発現させ、FmoPVがこれらを受容体として用いているのか調べる。
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