本研究は,従来の疫学,心理学,精神医学で行われてきた抑うつ研究に,社会学的視点である関係主義的相互作用論による社会と個人との関連・相互作用の影響という視点を導入し,その本質を捉えなおすことを目的とする. 本年度の当初の研究予定は,大きく分けて,①追跡調査と②学会報告,そして③論文執筆の3点であった.以下に,それぞれのその達成状況を示す. 第一に,インターネットを用いた追跡調査の実施を行った.これは,26年度の本調査に対し,因果関係を詳細に検討するために行った.ここでは特に,本研究の課題のひとつである,職業全体への一般化を目的としており,25年度の調査で回答した人を対象にし,その後自職卑下傾向や転職経験,職業評価基準などの変化を分析した.この調査では,本人の属性のほか,職業や生活にかかわる意識や,職業環境を訪ねるような項目を尋ねており,分析に必要となる詳細な回答を得た. これにより,既存に行ってきた研究の限定性から脱却し,より広い議論が可能となった.つまり,分析の精緻化,理論の強化に加え,他の分野での先行研究とのつながりをよくし,議論可能となる視座を広げられたことを意味する. 第二に,学会報告を精力的に行った.第三の論文執筆の前段階として,学会報告を行うことで,議論を深め,他の研究者との知見共有を図るためである.その結果といて,国内の主要な学会で,口頭発表を単独で3本行った.また,他分野研究者からの新たな知見を得るために,社会心理学分野での学会参加や研究報告も行った.よって,学会報告については予定以上の達成を実現できた. 最後に,論文執筆については,完了はできなかったものの,そのための研究とデータは十分に得ることができた.
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