本研究は、次世代宇宙推進システムである磁気セイルの推進性能(推力質量比)向上を目的として、同宇宙機用高温超伝導コイルシステムの研究開発を進めている。特に、磁気セイルの推力は、搭載するコイルの磁気モーメント(電流×ターン数×コイルが囲む面積)に比例するため、高温超伝導コイルの高磁気モーメント化(電流×コイルターン数×コイルが囲む面積の増大化)に取り組んでいる。本年は、システム全体の熱安定性を制約条件として高温超伝導コイルおよび関連システムを最適化し、磁気プラズマセイル用高温超伝導コイルシステムの磁気モーメント質量比最大化に取り組んだ。 非線形な特性を持つ超伝導抵抗は、通電電流および自己磁場、温度に依存するため、超伝導体に流れる電流密度分布の算出は自己無撞着に解き進める必要がある。本研究では、京都大学のスーパコンピュータシステムKDKを用いてコイルターンごとにMPI領域分割した数千ターンの超伝導コイルにおいて電磁界および熱解析を行い、磁気プラズマセイルにおいて最適なコイルシステムを決定した。 システム全体としての熱バランス(コイル冷却、コイル内発熱・熱伝導、コイルへの熱侵入)や電源出力変動等による影響を考慮して、超伝導コイルの強度、温度、熱安定性を制約条件とし、コイルシステムの磁気モーメント質量比が最大となるようにシステムの最適設計を行った。パラメータとして様々な運転温度・コイル形状(円形コイル・マルチポール型コイル・レーストラック型コイル)を仮定した。最適化の結果、コイル運転温度20 Kにおいて、コイル高さが大きく、レーストラック型と呼ばれるコイルにおいて磁気モーメント質量比が最大となり、先行研究による成果に比べて磁気モーメント質量比約3倍の向上が可能であることを明らかにした。
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