研究課題/領域番号 |
13J04761
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
溝部 浩志郎 富山大学, 大学院理工学研究部(工学), 特別研究員(PD)
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キーワード | 繰返し焼入れ / 疲労 / 介在物 / 高炭素クロム軸受鋼 / 往復転がり疲労 / 残留オーステナイト / 硬さ / 高周波焼入れ |
研究概要 |
平成25年度においては、繰返し炉焼入れから発展した様々な繰返し焼入れ手法の評価を行った。 当初予定されていた研究の進展について (1)繰返し焼入れ焼戻しと疲労破壊の関係 この試験を行った目的は、焼入れと焼戻しを交互に繰り返す際には、材料組織の残留応力が焼戻しによって逐次緩和されることが予想されたからであった。しかし、3回繰返し焼き入れ焼戻しを行った試験片と3回繰返し焼入れを行った試験片では、その旧オーステナイト粒径、疲労寿命に殆ど差はなかった。このことから、焼戻しによる応力緩和は介在物起点型破壊においてはそれほど影響がないことが明らかとなった。 予定以上の新たに行った研究について (2)高周波焼入れによる繰返し加熱焼入れについて この試験を行った目的は、焼入れに伴うオーステナイトからマルテンサイトの変態の程度を確かめるためである。そのため、急冷を伴わない高周波加熱を繰返し行い、高周波焼入れを行った試験片と、高周波加熱を一度行った後、急冷を行った試験片について比較した。その結果、繰返し加熱後に冷却を行うことで疲労強度が向上することが明らかとなった。 (3)過酷な往復転がり疲労条件下における材料組織に及ぼす繰返し焼入れの影響 本研究のテーマである繰返し焼入れによる破壊起点介在物の変化を考える上では、応力負荷による材料組織の変化についても考える必要がある。そこで、繰返し焼入れを行った試験片に対し、過酷な往復転がり疲労条件下における材料変化について研究を行った。その結果、繰返し焼入れによって残留オーステナイト量が向上した。また、繰返し焼入れを行っていない試験片と比較して、繰返し焼入れを行った試験片では残留オーステナイトが減少しにくいことを明らかにした。さらに、接触応力、応力負荷によるビッカース硬さの向上、残留オーステナイト減少量の3つの観点から整理を行い、それぞれの関連性について明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究は内部起点介在物における材料組織と破壊起点介在物の種類の関係を明らかにすることを目的とする。そのため計画されていた、繰返し焼入れ焼戻しと疲労破壊の関係のみならず、高周波焼入れによる繰返し加熱焼入れ、過酷な往復転がり疲労条件における材料組織に及ぼす繰返し焼入れの影響についても研究を行い成果を得たため。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画に則り、1回焼入れと3回焼入れの中間である2回焼入れを施した試験片を用いて回転曲げ疲労試験を行う。これにより、繰返し焼入れによる介在物の種類の変化の遷移の過程について詳細な検討を行う。更に繰返し焼入れ回数を増やすことで、結晶粒微細化の限界と介在物の関係についても調査を行う。また、XRDによる残留オーステナイト測定を行い、介在物周辺の組織が受ける疲労負荷の影響について検討を行い、介在物と材料組織の関係性が疲労強度に及ぼす影響について考察する。
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