研究課題
本年度は、昨年度に引き続き、乳児期のコミュニケーション能力の発達を評価する枠組みを構築するため、コミュニケーション能力の発達予後の問題が報告されている乳児期早産児、及び満期産児における社会的刺激の知覚特性を検証した。具体的には、6・12ヶ月の早産及び満期産乳児を対象に、(a)バイオロジカルモーション課題、(b)ヒトの動きへの選好課題、(c)顔―声の視聴覚マッチング課題、(d)視線追従課題を用いて検討した。その際、アイトラッカーを用いて、非侵襲的・定量的に乳児の視線反応を記録・分析した。本年度に実施した横断研究の結果、下記の5点が明らかとなった。(1)早産児では満期産児よりもヒトの動きへの選好が少ない。(2)早産児では満期産児よりも視線追従が少ない。(3)早産児及び満期産児において、12ヶ月児は6ヶ月児に比べ、ヒトの動きへの選好が強く、視線追従を多くする。(4)ヒトの動きへの選好と視線追従の割合との間に正の相関関係がある。(5)早産児では、在胎週数と出生体重が、視線追従の割合と負の相関関係にある。本年度の研究では、早産児における社会的刺激の知覚特性が、6・12ヶ月の時点で満期産児と異なることを示した。現在、早産児及び満期産児の社会的刺激の知覚特性を、6・9・12・18ヶ月時点で縦断的に評価し、12・18ヶ月時点のコミュニケーション能力との関連性を検討している。さらに、早産児において、周産期のどのような要因が、社会的刺激に対する知覚特性に関連する可能性があるのかについて検討し、コミュニケーション能力の発達に周産期の胎内・胎外経験が及ぼす影響を検討している。
2: おおむね順調に進展している
乳児期におけるコミュニケーション能力の発達を評価する枠組みを、非侵襲的・定量的な手法を用いて構築することができた。本年度は、当該テーマに関連するレビュー論文を執筆し、京都大学大学院教育学研究科紀要に受理された。また、乳児期のコミュニケーション能力に関連する脳機能を明らかにした論文が、国際雑誌Neuroimageに受理された。
今後は、現在実施している縦断研究を継続して行い、社会的刺激の知覚特性とコミュニケーション能力の発達的関連性を検討する。さらに、早産児においては、周産期のどのような要因 (eg., 在胎週数、出生体重、医療措置など) が、社会的刺激に対する知覚特性に関連する可能性があるのかについて検討し、コミュニケーション能力の発達に周産期の胎内・胎外経験がどのように影響しているかについて精査する。
すべて 2015 2014 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) 備考 (2件)
京都大学大学院教育学研究科紀要
巻: 61 ページ: 229-242
Neuroimage
巻: 103 ページ: 476-484
10.1016/j.neuroimage.2014.08.034
https://sites.google.com/site/masahiroimafuku/
http://www.educ.kyoto-u.ac.jp/myowa/staff/doctoral/post-4.html