研究課題/領域番号 |
13J04773
|
研究機関 | 東京芸術大学 |
研究代表者 |
下崎 久美 東京藝術大学, 大学院音楽研究科, 特別研究員(DC1)
|
キーワード | サーミ / ヨイク / フィンランド / 民族音楽学 |
研究概要 |
本年度は、20世紀初頭の民族音楽学者でヨイク研究の第一人者、アルマス・ラウニスA. Launisの研究書およびフィールドノートを調査し、ヨイク研究初期の状況を明らかにした。ラウニスが生前に出版した著書のなかで、最も周知されているのは、『ラップランドのヨイク旋律集Lappische Juoigos Melodien (1908)』で、この研究書は800以上のヨイクの旋律の採譜と、それらの採録地別分類および簡易な音楽的分析を加えたものである。しかしながら、この研究書のみでは、ラップランドを巡った期間や順路、歌い手との交流の様子など、ラウニスが行ったフィールドワークの詳細を知ることはできない。 そこで、上記1908年の研究書の元となる1904年および1905年のフィールドノート、そして1920年の再調査の際に書き残した民族誌的著作『憧れの士地 : ラップランド訪問の思い出Kaipauksenimaa : Lapinkävijän muistoja (1922)』を、フィンランドのヘルシンキ大学図書館アーカイヴスで調査した。これら資料によると、20世紀初頭という北極圏内の交通手段が非常に限られていた時代に、ラウニス率いる調査団が多大な労力をかけてノルウェー、スウェーデン、フィンランドにまたがる10以上のサーミ人居住区を巡り、漁業やトナカイ放牧といった日常生活のあらゆる場面においてサーミ人がヨイクを取り人れていた実態や、教会や家族間におけるヨイク伝承の様子を事細かに観察していたことがわかった。さらに、歌い手に関する情報や歌の内容について記されている部分もあり、1908年の研究書の補足資料として、このフィールドノートが重要な意味を持っていると言える。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の目標てせあったラウニスの一次資料調査を当初の予定通り遂行できたため。
|
今後の研究の推進方策 |
ラウニスを初め、その後の幾人もの研究者がフィンランドのヨイク伝承の盛んな地としてイナリを挙げており、また、現在もなおこの地域にサーミに関する重要な施設やヨイク伝承が残されていることから、今後のフィールドワークの拠点をイナリに置くことにした。
|