研究課題/領域番号 |
13J04792
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
猪俣 賢太郎 大阪大学, 経済学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 寡占市場 / 補完財 / 代替財 / brand proliferation |
研究概要 |
上記課題の目的、内容、意義、重要性は以下の通りである。これまで、いかにして新たな財(私たちが普段消費するモノ)を企業(=生産者)が市場に供給するようになるかという点が様々な観点から論じられてきた。新たな財の創出には当然投資費用を伴うため、寡占市場における当該誘因と競争度との間には負の関係性があるとされてきた。すなわち、投資費用は蓄えられた利潤の中から拠出されるため、競争により低められた利潤によって、財創出の余裕は減少するというのがそのメカニズムである。しかし、この競争がない状態つまり独占状態においては企業はもはや新たな財を創出するまでもなく利潤を稼ぐことが可能なため、あえて新たな財を創出する誘因は弱まる。問題は、この負の効果のいずれが大きいか、というのが私の立てた問題意識である。この点、既存研究においては、独占状態におけるそれの方が大きいと結論づけられがちであった。しかし、私は、2つのロジックで、それが逆転する可能性のあることを特定した。すなわち、①各財間の代替度(どれくらい2つの財が似通っているかの度合い)が非対称である(A社とB社のPCとの代替度と、B社とC社のPCの代替度は違う)ことを仮定した場合、②代替度は同じでも卸売企業との取引を入れた場合の2つのシナリオでこうした可能性を指摘することが出来た。①は、2財供給した企業は、当該2財がライバル企業からシェアを奪い返す力を強めるという意味で互いに補完財の関係になることから導かれる。②は、上流企業との取引関係における卸売価格の値下がりを狙ってそれを行うことがあるということを示した(これは、下流企業同士の競争は上流企業に支払う原材料購入価格の支払い可能額の減少をもたらすため、上流企業は卸売価格を下げざるを得ないためである)。この意義は、寡占市場における逆になりがちな帰結に別の可能性を示した点にある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上の課題にはいくつかのロジックで結果を示すことに成功しているが、今後は競争が強まることが逆に企業に正の効果をもたらすということを示す必要がある。この点が26年度の課題である。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度はどのような場合においても最終的には企業の得られるものは非対称であった。しかし、私が最終的に示すべきことは、市場そのものがもたらす正の効果であるので、そのためには、企業が寄り合うことによってもたらされる何らかの利益すなわち集積(ないしはコモディティ化)の利益を考えることが必要になってくる。今年度の課題はそれを様々な観点から論じることにある。
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