研究課題/領域番号 |
13J04793
|
研究機関 | 東京藝術大学 |
研究代表者 |
松岡 昌和 東京藝術大学, 音楽研究科, 特別研究員(PD)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 第二次世界大戦 / シンガポール / 香港 / 文化政策 / プロパガンダ / 植民地 / 記憶 / 文化アイデンティティ |
研究実績の概要 |
本研究は、戦時中から戦後にかけてシンガポールおよび香港で活動した「文化人」のネットワークを見ることよって、戦時期から戦後にかけての文化活動の連続と断絶、「戦争の記憶」の創造・継承・忘却のあり方を浮き彫りにするものである。
本年度はまず、昨年度実施した研究の成果を学術論文の形にまとめ、刊行した。具体的には、日本占領下シンガポールにおける音楽活動、戦時期に陸軍によって徴用されシンガポールを中心に南方占領地各地で活動した漫画家、そして戦時期日本の南方向け映画工作についての議論についてそれぞれ論文ないし研究ノートとしてまとめ直し、いずれも年度末に刊行された。また、日本占領下シンガポールにおける日本の昔話の戦争プロパガンダとしての利用については、共著論文の一部として出版された。そこでは他の執筆者も含め、特に20世紀前半の日本の文化アイデンティティについて考察しており、本研究課題を今後整理していく上での大きな手がかりが得られた。また本年度は新たに、日本占領下香港の文化政策、戦時期陸軍によって徴用されシンガポールで活動した文学者、日本占領下シンガポールにおける映画興行、日本占領下シンガポールにおけるメディア政策についてそれぞれ整理し、主に東アジア・東南アジアの日本研究・アジア研究の学会において研究発表を行った。その際、特にシンガポールと香港の比較を念頭において発表を行い、聴衆との議論の中で新たな知見を得ることができた。
研究発表と並行し、国内外で新たな資料の収集も行った。これらについてはその分析と整理を進め、次年度以降その成果を発表していく。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究成果については前年度までの成果を研究論文などの形で刊行することができ、また国内外で研究発表を行うことで関連諸分野の研究者と多くの議論をすることができた。一方で、戦時期から戦後にかけての文化活動の連続性についての分析については未だ十分な分析および整理ができておらず、今後の課題として残されている。
|
今後の研究の推進方策 |
これまで行ってきた戦時期についての各トピックは出揃ってきたので、まずそれらを包括するまとめの議論を研究発表の形で行う。また、本年度までに十分に検討できなかった内容、特に戦後の日本、シンガポール、香港の文化活動と戦争との関連性の検討、また戦後に文化アイデンティティを構築する上で戦争がもたらした影響についての考察を行う。
|