研究課題/領域番号 |
13J04803
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
新垣 真紀子 東北大学, 歯学研究科, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | iPS細胞 / 歯 / エナメル芽細胞 / 歯原性上皮細胞 / 再生 |
研究実績の概要 |
歯胚の発生は、歯原性上皮細胞と神経堤由来間葉細胞間の相互作用により複雑に形態制御されている。しかし、歯のエナメル質を形成するエナメル芽細胞に関しては、詳細な分化機序が解明されておらず、人工的な分化誘導技術がいまだ確立されていない。本研究では、人工多能性幹細胞(iPS細胞)を用いた歯原性上皮細胞またはエナメル芽細胞への分化誘導法の開発を進めている。 これまで我々のグループは、歯原性上皮細胞からエナメル芽細胞への分化において、エナメル芽細胞が分泌する細胞外基質蛋白アメロブラスチン(AMBN)が重要であることを明らかにしている。本研究では、マウスiPS細胞とラット歯原性上皮細胞株SF2を共培養することで、共培養10日目にiPS細胞由来のp63、サイトケラチン14、Ambn、エナメリン(Enam)の発現が確認された。また共培養14日目の免疫組織染色で、上皮細胞様に分化したマウスiPS細胞集団の一部にAMBN陽性細胞の局在を認め、マウスiPS細胞をエナメル芽細胞へ分化誘導することに成功している。加えて、SF2が発現する神経栄養因子Neurotrophin-4(NT-4)やBMP分子も、Ambnを発現する歯原性上皮細胞への重要な分化誘導因子であることを明らかにしている。 将来的にiPS細胞由来の歯原性上皮細胞を再生医療研究などに応用すること想定し、他の細胞混入を最小限に効率よく分化誘導するため、SF2培養上清のconditioned medium(CM)によるiPS細胞培養方法を検討している。iPS細胞をCM培養した場合もCK14やAmbnの発現増加が認められた。また、共培養に比較しOct3/4やBrachyuryの顕著な発現低下などから、SF2培養上清中のsoluble factorがiPS細胞から上皮細胞や歯原性上皮細胞への分化誘導に間接的に働くことが示唆される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度は、iPS細胞を歯原性上皮細胞、あるいはアメロブラスチン(AMBN)を発現するエナメル芽細胞へ効率的かつ高純度に分化誘導するため、SF2の培養上清中のsoluble factorの解析と培養方法の検討を行っている。リアルタイムRCR解析により、SF2はコンフルエント培養後にAmbnとEnam、続くアメロジェニン(Amel)の発現上昇を示しており、現在SF2培養上清中のタンパクも確認中である。また、iPS細胞を初期段階で上皮細胞へ誘導し、効果的にエナメル芽細胞へ分化誘導するための方法も検討している。これらの成果をもとに、SF2のCM培養によるiPS細胞から歯原性上皮細胞への分化誘導効率の上昇に繋がれば、iPS細胞由来歯原性上皮細胞の獲得やエナメル芽細胞分化メカニズムの解析、将来的な人工歯胚再構築への応用が期待され、着実に本研究計画のステップを実現していることから概ね順調に進展しているものと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
SF2のCM培養によるiPS細胞から歯原性上皮細胞への分化誘導効率化を目標に研究を行う。 その際に、ハイドロキシアパタイトの前駆物質として知られる人工合成リン酸オクタカルシウム(OCP)コンパウンドを用いて、3次元培養とカルシウムイオン供給を行いながら、さらに効率的かつ他の細胞混入を最小限にしたiPS細胞からAMBNを発現する歯原性上皮細胞への分化誘導法の開発を行う予定である。 また現在、マウスiPS細胞をヒトiPS細胞に替えて同様にSF2との共培養およびCM培養を行っており、今後、上皮細胞マーカーやAmbnやEnam、Amelなどのエナメル芽細胞分化マーカーの発現をRT-PCR解析する予定である。
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