ヌクレオソームが不規則に折り畳まれることによって生じるクロマチンドメイン内部において,どのようにヌクレオソームがゆらいでいるのか,そしてそれがどのように遺伝子発現やDNA複製などの細胞機能と関連しているのかという問題を解決するために研究を行ってきた.2014年度までに,クロマチンの構造と動態を同時にライブセルで観察することができる1分子ヌクレオソームイメージング法の開発を行ってきた.2015年度は,1分子ヌクレオソームイメージング法を用いることで,生細胞におけるクロマチンの観察に取り組んだ.これまでに,トリコスタチンA (TSA)を用いたヒストンアセチル化の誘導によるクロマチンの変化を既に観察していたが,他にもクロマチン構造タンパク質であるコヒーシンのノックダウンや,核内の塩濃度の変化によっても大きく変化することを観察した.さらに,DRBなどの薬剤によって,細胞内における転写活性を低下させることによって,クロマチン自体の構造は変化しないが,その動態は大きく変化することを観察した.そして,ES細胞の分化過程において,クロマチンの構造と動態が変化することを観察した.これらの結果は,クロマチンの構造と動態の変化が,細胞の分化過程における転写活性などと関連していることを示唆している.1分子ヌクレオソームイメージング法の開発とそれを用いたクロマチンの観察に関する成果について,論文にまとめ,投稿を行った.
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