研究実績の概要 |
(1) 成層圏オゾンの監視に用いられている太陽掩蔽観測データ(日の入と日の出の一日二回観測を行う)では、二つの時刻で観測値が有意に異なることが知られていた(2%-5%)。その要因はこれまで謎であったが、我々の研究によりオゾンの日変動(特に、大気潮汐鉛直流による鉛直移流)がその主要因であることを突き止めた。上記の結果を国際ジャーナル論文として公表した(Sakazaki et al., 2015, Atmospheric Chemistry and Physics)。
(2) 大気潮汐のうち、太陽非同期成分について力学的研究を行った。先行研究では東西波数展開に基づく波数空間での議論がほとんどであり、その実体が不明瞭であった。そこで本研究では、太陽非同期潮汐を物理空間で抽出する方法を新たに考案し、高解像度気候モデルデータに適用した。その結果、熱帯対流圏-下部中間圏における太陽非同期潮汐は、主にアフリカ大陸・南アメリカ大陸上空で励起され、三次元的に伝播する内部重力波の重ね合わせとして理解できることを明らかにした。また季節性についても明らかにし、特に成層圏界面半年周期変動(S-SAO)に伴う背景風フィルタリング効果が重要であることを示した。さらに、これらの日変動が気候場に与える影響を定量的に見積もった。その結果、成層圏内ではその影響は小さいが、中間圏の東西風駆動に寄与していることを示唆する結果を得た。上記の結果を国際ジャーナル論文として公表した(Sakazaki et al., 2015, Journal of Geophysical Research)。
(3)その他、再解析データを用いた大気潮汐の経年変化に関する研究、下部対流圏における日変動の研究、帯状一様日変動の研究などを進めている。
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