研究実績の概要 |
(1) 東西一様日変動成分の研究:大気科学研究においては、東西平均場の物理量を議論することがしばしばある。この東西一様成分が熱帯成層圏において有意な日変動を示すことが明らかになった。当成分は明瞭な季節変化を示し、特に北半球夏季に赤道反対称成分が卓越することもわかった。さらにこの成分が卓越することは、簡単な熱源応答モデルでも再現でされることを示した。本成果は投稿論文として公表している(Sakazaki et al., 2015, Geophysical Research Letters)。 (2) 下部対流圏の日周期ロスビー波に関する研究:Sakazaki and Fujwiara (2010a, b)で発見した日周期ロスビー波について、その力学メカニズムの研究を明らかにする研究を行った。全球再解析データや衛星観測データ(TRMM)の解析により、水蒸気の凝結・降水にともなう非断熱的なプロセスが、波の伝播機構に関わることを示唆するという興味深い結果を得た。これらの仮説を検証すべく、数値シミュレーション(Weather Research and Forecasting (WRF) Modelを使用)を用いた研究も開始した。まずはシミュレーションにおいても観測された特徴を持つ渦構造が再現できることを確認した。結果については国内学会で発表を行った。 (3) 歴史学との融合研究:広く地球の現在気候の理解を進める試みとして、歴史学との融合研究をスタートさせた。安政3年(1856年)に江戸を急襲した台風を対象としたケーススタディを実施し、当時の版本や古文書(日記類)の記録から、被害状況の総覧・台風の進路/強度推定を行った。結果は学会で発表を行うと同時に、投稿論文として公表した(坂崎ほか, 2015, 生存圏研究)。
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