研究課題
ミトコンドリアは、細胞活動に必要なエネルギーの大半を供給するオルガネラであると同時に、活性酸素を放出しており、ミトコンドリア自身が酸化傷害を受けやすい。ミトコンドリア傷害の蓄積は、神経変性疾患、老化、癌、糖尿病など様々な病態と関連しているため、細胞が傷害を受けたミトコンドリアをどのようにして除去し、その品質を維持するのかは重要な研究課題である。申請者らは、ミトコンドリアの品質管理に寄与すると考えられているマイトファジーに注目し、特に出芽酵母におけるマイトファジー必須のタンパク質であるAtg32を中心とした分子機構の解明に努めている。これまでに、申請者は、マイトファジー誘導時において、Atg32がミトコンドリア上に集積することを明らかにしてきた。本年度、申請者はさらに以下の2点を明らかにした。1、マイトファジー誘導条件下におけるAtg32の集積は、Atg11依存的な現象である。申請者はAtg11を欠損させると、飢餓誘導条件下においてもAtg32が集積しないことを見出した。このことはAtg32の集積過程にAtg11が関わることを示唆している。2、Atg32の151番目から200番目までの50アミノ酸残基を削った変異株では、マイトファジー誘導条件でなくてもAtg32はミトコンドリア上に集積することを見出した。このことは、この領域の50アミノ酸残基が、Atg32集積の制御に寄与することを示唆している。さらには、マイトファジー誘導条件では、Atg32の114番目と119番目のセリン残基がリン酸化修飾を受けることが分かっているのだが、Atg32Δ151-200a.a.を発現させた酵母では、マイトファジーが誘導されない富栄養条件下においても、Atg32Δ151-200a.a.はリン酸化修飾を受けることが確認された。さらに興味深い事に、114番目と119番目のセリン残基をアラニン残基に置換した変異株では、富栄養条件下におけるAtg32Δ151-200a.a.のリン酸化修飾は確認できなかった。このことから、Atg32の151-200a.a.ドメインは、114/119セリン残基のリン酸化修飾を、負に制御してい可能性が考えられた。
2: おおむね順調に進展している
申請者は、ミトコンドリア上におけるAtg32の集積現象に関して、主に2つの新しい事実を見出している。さらに、マイトファジー分子メカニズムに関連する研究成果をEMBO reports誌に共著者として発表しているため、現在までの達成度としては、おおむね順調に進展していると自己評価している。
平成25年度において、Atg32はAtg11依存的にミトコンドリア上に集積することが新たに見出された。今後は、Atg32の集積に関わるAtg11のドメインを同定する予定である。またAtg32の151から200番目までの50アミノ酸残基は、Atg32のリン酸化修飾を負に制御していることが示唆された。この領域にAtg32のリン酸化修飾を負に制御する因子が結合している可能性が考えられるため、質量分析法を用いて、Atg32の151番目から200番目までのアミノ酸残基に結合するタンパク質の同定を試みる予定である。
すべて 2013
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件)
EMBO reports
巻: 14巻 ページ: 788-794
10.1038/embor.2013.114.