研究課題/領域番号 |
13J04854
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
矢野 雅貴 九州大学, 人文科学研究院, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 心理言語学 / 神経言語学 / 文理解研究 / 意味的処理 / 事象関連電位 / 再分析処理 |
研究概要 |
本研究課題の目的は、人間の言語理解、特に意味の理解における時間的性質・空間的性質を明らかにすることを通して、言語普遍的な言語理解モデルの解明に貢献することである。この目的を達成するために、本年度は、アスペクト強制文に関する実験を実施した。日本語話者を対象とした事象関連電位(ERP)実験の結果、アスペクト強制を含まない統制文に比べて、アスペクト強制を含む文では、前頭部に局在した陰性波が観察されることが明らかになった。これは、英語話者やドイツ語話者を対象とした先行研究の結果と整合性があり、アスペクト処理において言語普遍的な処理が行われている可能性を示唆するものである。また、アスペクト強制文で観察された前頭部陰性波は、意味的逸脱を含む文に対して観察されたN400とは異なる成分であることを初めて同一実験内で示した。N400は、従来意味的な処理に関連するとされてきた成分であり、この結果から、意味的処理においても、統語的処理と同様に、repair processとrevision processには機能的な違いがあることが明らかとなった。そのほか、統語的な処理に関して、類型論的な言語間の違いと文処理メカニズムの関係性についても調査した。 ただし、本年度は、上述の実験で観察された前頭部陰性波の再現性については十分には確認できなかった。また、この前頭部陰性波がアスペクト強制特有の成分であるのか、またはsemantic revision process一般の処理を反映した成分であるのかは明らかにできなかった。来年度はこの点に関する検討を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は予定通り, 事象関連電位実験を実施することができた。また、実験結果は予測通りの結果であり、本年度の研究成果は十分であった。さらに研究成果を、複数の国内外の学会・論文で報告することができた。
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今後の研究の推進方策 |
来年度以降は、本年度得られた結果の再現性・普遍性に関する検討が必要である。
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