研究概要 |
本研究の最終目的は, 神経学的微細徴候の検査方法の1つである前腕の回内回外運動によるADHDの定量的評価法の確立である. 神経学的微細徴候とは, 脳の発達や機能障害を反映するものであり, 発達障害などの疑いがある患者の診断に用いられている. この徴候の検査法の1つとして, 前腕を表裏と交互に回転させる前腕の回内回外運動検査があり, 医師は目視により, 患者の運動の異常や拙劣さを評価する. 本年度は, 来年度からの計画と最終目的を見据えて, 1) ADHDの特徴を表す新たな評価指標の作成と検討, 2) 6歳以下の健常児の測定, 3) 7歳~12歳のADHD児童の測定を行った. 1)医師が児童を回内回外運動により評価する際, 回転の正確性や速さ, 体動や肘の動き, ミラー運動(片手の回内回外運動を行う際に生じる動き)など複数の項目を観察する. これまで, 両腕の回転をガイダンスに合わせて模倣するというタスクにより, 両腕の協調性や肘の動き, 回転の正確性などの指標を作成したが, 回転の速さやミラー運動の詳細な評価を行えていなかった. 新しい指標の作成とその解析は, 回内回外運動とADHDの特性の関係性を見つけ出すという点において極めて重要となる. そこで, まず, 片腕と両腕で全力の回内回外運動行う2種のタスクを作成し, 回転の速さやミラー運動などこれまでに評価できていない評価指標の解析を行った. 2)3)更に, 新しい指標を加えた上で, これまで測定できていなかった6歳以下の健常児, 7歳~12歳までのADHD児の測定を行った. これは, 評価に用いるより精度の高い成長曲線の確立において極めて重要なものである, 測定と解析の結果, これまでの指標と同様, 新しく作成した指標についても, 本システムを用いることで健常児童の成長発達を表すことができた, 更に同年齢の健常児童の平均点に比べ, ADHD児の得点が下回る傾向にあり, 得られた成長曲線がADHDの評価基準となることが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の最終目的は, 神経学的微細徴候の検査方法の1つである前腕の回内回外運動によるADHDの定量的評価法の確立である, システムや実験タスク, 評価指標の改善点や生体信号や発達障害の症状の複雑さによる問題点など, 改善すべき点はまだあるが, その改善策, 来年度からの計画の方向性は定まっているため
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究では, 作成した指標の有用性の確認の意味も含め, 各評価指標別にADHD児と健常児の運動機能の比較を行ってきた. 今後の方針としては, 指標を個として比較するだけではなく, 各指標の組み合わせにおいて, ADHDの症状や徴候を示す特徴がないかを検討し, より精度の高い評価方法の確立を目指す. また健常者との比較だけでなく, ADHDの症状やその症状の度合いなどに着目し, 細微な情報をクラス化することで, より有用な情報の選定, 特徴の抽出を目指す. 注意すべき点は, 複雑なADHDの症状や細かな個人情報を如何にしてクラス化するかという点である. そこで, 動きや属性のパターン化を多変量解析, 機械学習などにより試みる.
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