研究課題/領域番号 |
13J04897
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
金子 美樹 九州大学, システム生命科学府, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 動作解析 / 神経学的微細徴候 / 回内回外運動 / 注意欠陥・多動性障害 / 加速度・角速度センサ / 成長曲線 |
研究実績の概要 |
本研究の最終目的は,神経学的微細徴候の検査方法の1つである前腕の回内回外運動による注意欠陥多動性障害(ADHD)の定量的評価法の確立である. 本年度は,来年度からの計画と最終目的を見据えて,多次元解析法を用いた健常児童の成長推移とADHD児童の特徴抽出を行った. 医師が発達障害の疑いがある児童を回内回外運動により評価する際,回転の正確性や速さ,体動や肘の動き,ミラー運動(片手の回内回外運動を行う際に,非回転腕に生じる動き)などいくつかの観察項目を用いる.これまでの研究で,両腕の前腕回内回外運動をガイダンスの運動に合わせて模倣するという実験タスクにより,右手と左手の運動の協調性,ガイダンスの動きに対する模倣性,前腕の上下左右の動きや脇腹に対する肘の開き,肘の屈曲姿勢の保持などの指標を作成し,両腕や片腕の前腕回内回外運動を全力行うという実験タスクにより,回転の速さやミラー運動,運動時の姿勢維持などの指標の作成を行い,それぞれの指標において同年齢の健常グループとADHDグループの比較を行った.しかし,それぞれの指標の比較だけでなく,どの観察項目(指標)がどの年齢でどういった発達をするのか,また,各年齢における指標同士が発達過程においてどう関係しているかを検討する必要がある. そこで,主成分分析や自己組織化マップなどの多次元解析法を用いて,各年齢の特徴を表す指標の選定,スコアの作成を行った.解析の結果,選定した指標から作成した新しいスコアにより,各指標における健常児童の成長推移の違いを得ることができた. これらの結果から,健常児童において,4~6歳で顕著な発達がみられる指標と6歳以降に発達が見られる指標を選定することができ,回内回外運動機能の発達の違いを得ることができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の最終目的は,神経学的微細徴候の検査方法の1つである前腕の回内回外運動によるADHDの定量的評価法の確立である.ADHDの症状別の特徴や健常児童の年齢別の特徴の複雑さから,これらを識別する手法で検討すべき点や改善すべき点があるが,来年度からの計画への見通しは定まっているため
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今後の研究の推進方策 |
今後の計画と最終目的を見据えて,多次元解析法を用いた健常児童の成長推移とADHD児童の特徴抽出を行った.そして,これらの手法から得られた成長推移曲線がADHDの評価基準になりえることを示唆した.しかし,ADHD児童において,年齢による区分だけでなく,症状別,症状のレベル別に区分する必要がある.そこで今後は被験者のグループ化を行い,ADHD児童の特徴,ADHD児童の症状,または症状レベルを表す指標の組み合わせや特徴を同解析法で抽出し,ADHDの症状スケールを示す指標の構築を目指す.また,これらの手法でえられた指標が医師の従来の観察法とどのような相関があるか検討し,本手法の有用性や精度の検討を行う.
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