研究実績の概要 |
本年度は,注意欠陥多動性障害(ADHD)の定量的評価法の確立のために,(1)従来法との比較, (2)ADHD以外の発達障害との比較という2つの観点から提案した評価法の妥当性の最終検討した. (1)では,提案した指標値と医師の目視評価,目視評価法の基準の2つの従来法と比較を行った.まず,経験年数の異なる小児科医5名に児童の回内回外運動の動きの良し悪しを4段階で評価してもらった.この4段階評価と提案指標のスコア間での相関分析の結果,2群間で有意な正の相関が得られた(p > 0.01). さらに,5名の個別スコアと比較したところ,経験年数が長い医師の評価との間に有意な正の相関があった.このことから,提案した指標が回内回外の定量的評価法に有用であることがわかった.さらに,4歳から12歳までの健常児の測定を行い,従来の目視評価法の年齢基準をもとにグループ分けし,統計解析を行った.解析の結果,各指標においてグループ間で有意な差が得られ,提案した評価指標から得られた健常児の発達推移が,回内回外運動の評価基準として有用であることがわかった. (2)では,ADHDのみを発症したグループとADHDと自閉症スペクトラム(ASD)を併存したグループ,同年齢の健常児グループ間で統計解析を行った.解析の結果,ADHDのみとASD併存の2つのグループと健常児童のグループとの間で有意な差がみられた.また,ADHD児は,同年齢の健常児に比べ,非利き腕において回内回外運動時の神経学的微細徴候が多くみられ,特に経時変化において顕著に現れることがわかった. 本研究では,提案した評価法の有用性を検討し,さらにADHD児童の回内回外運動における定量的特徴を得ることができた.これらの結果は,ADHD児の定量的評価として今後貢献できる価値ある結果であると考えられる.
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