研究課題/領域番号 |
13J04914
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
太田 聡 山梨大学, 総合研究部, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2013-04-26 – 2016-03-31
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キーワード | ゼブラフィッシュ / ゲノム編集 / TALEN / CRISPR/Cas9 / 変異体 / 逆遺伝学 |
研究実績の概要 |
1. 昨年度までに左右非対称性の確立に重要なKupffer's vesicleにて発現するcapla遺伝子について、ゲノム編集技術TALENによりゼブラフィッシュ変異体を作製していた。本年度はcapsla変異体のcapslb遺伝子に変異を導入することで、capsla/capslb二重変異体を作製した。しかしながら、capsla/capslb二重変異体においてもゼブラフィッシュの胚発生過程に重篤な異常は認められなかった。 2. 2013年初頭、さらに新規のゲノム編集技術CRISPR/Cas9システムが発表されたことを受け、私たちもCRISPR/Cas9をゼブラフィッシュでも利用できるように最適化した。CRISPR/Cas9は標的遺伝子を規定するguide RNA(gRNA)と標的遺伝子を切断するCas9が別々であることが大きな特徴である。低分子gRNAは複数注入することが容易なため、CRISPR/Cas9は複数遺伝子の同時破壊に適していると考えられた。したがって私たちはCRISPR/Cas9による複数遺伝子の同時破壊を試みた。標的遺伝子としては心臓前駆細胞の移動にかかわるs1pr2とspns2、色素形成にかかわるgoldenとtyrを選択した。4遺伝子をCRISPR/Cas9により同時に破壊した結果、二叉心臓と色素細胞の減少という2つの異なる表現型を示すゼブラフィッシュが観察された。標的遺伝子座の塩基配列を調べたところ、4遺伝子すべてに挿入・欠失変異が導入されたことが明らかになった。これらの4遺伝子における挿入・欠失変異は次世代へと受け継がれることを確認した。加えて、同一の遺伝子に対して複数のgRNAをCas9と共に注入することにより、2つの遺伝子座間の欠失と逆位も誘導できることを明らかにした。以上の成果はGenes to Cells誌に報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
国内においては、CRISPR/Cas9の有用性にいち早く着目し、ゼブラフィッシュにおいてもCRISPR/Cas9が実用的であることを明らかにした。CRISPR/Cas9はその手軽さからTALEN以上に爆発的な広がりを見せており、私たちの研究が国内のゲノム編集技術の進歩に貢献することができたと思っている。また、CRISPR/Cas9はTALENでは難しかった複数遺伝子の同時破壊についても非常に有効な手段であることも示した。
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今後の研究の推進方策 |
1. capsla/capslb二重変異体においても発生過程に顕著な異常が見られなかったため、両遺伝子について母性遺伝子-接合体遺伝子変異体を作製する。 2. CRISPR/Cas9を基にした新たな発生工学技術の開発に着手する。
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